クロアチア独立国

クロアチア独立国（NDH）の歴史

クロアチア独立国（Nezavisna Država Hrvatska、略称: NDH）は、第二次世界大戦中の1941年から1945年まで存在した国家で、現在のクロアチアおよびボスニア・ヘルツェゴビナをカバーしていました。この国は、クロアチアのファシズム団体であるウスタシャによって支配され、一般的にはナチス・ドイツおよびイタリアの傀儡国家と見なされています。国歌は「Lijepa naša domovino」（私たちの美しい故国）です。

背景と成立過程

クロアチア独立国は、第一次世界大戦後の1918年に設立されたユーゴスラビア王国の中で、セルビア人とクロアチア人の間の不和から生じた動きの結果として現れました。1929年には、国王アレクサンダルによって王国独裁が宣言され、その後の暗殺事件や政局の混乱は、クロアチアの独立志向を更に強めました。

1941年、ユーゴスラビア王国がナチス・ドイツおよびイタリアによる攻撃を受け、急速に崩壊する中、クロアチア独立国が設立されました。4月10日、ザグレブにおいてこの国の樹立が宣言され、ウスタシャのリーダーであるアンテ・パヴェリッチが国家元首になりました。

政治的構造

NDHは名目上は王国の体裁を取り、サヴォイア家からアイモーネ公を迎えましたが、実際の政治的権力はパヴェリッチに集中していました。彼の持つ「ポグラヴニク」という肩書は、独立国の事実上の最高指導者としての地位を象徴していました。ウスタシャは、他の政党を非合法化し、一党独裁政権を築きました。

暴力と人権侵害

NDHは、セクター別の民族浄化を行い、多くのセルビア人が強制収容所に収監され、約70万から100万人の命が奪われたとも言われています。中でも、ヤセノヴァッツ収容所は「バルカンのアウシュヴィッツ」と称されるほどの凶悪さでした。また、ユダヤ人、ロマ（ジプシー）、クロアチア人の反対派に対する弾圧も厳しく、政府の政策は人権侵害に満ちたものでした。

外交関係の形成

クロアチア独立国は、特にドイツやイタリア、日本などの枢軸国からの承認を得て外交関係を築きました。日本は1941年6月7日に独立を承認し、その後の同盟関係も築かれましたが、イタリアとの領土問題から公使館の設置には慎重でした。

崩壊とその後

しかし、1943年にイタリアが連合国に降伏すると、クロアチア独立国の外交的立場はさらに厳しくなります。1945年には、ドイツが降伏し、クロアチア独立国も消滅しました。その後、この地域はユーゴスラビアに再併合されることとなります。

結論

クロアチア独立国は、戦争の混乱と民族対立の中で成立し、ウスタシャ政権の下で数々の人権侵害が行われました。その歴史は、現在においてもクロアチアの民族的アイデンティティや政治に影響を与えています。

もう一度検索