クローゼット

「クローゼット」という言葉は、いくつかの異なる意味で使われます。最も一般的に知られているのは、衣類や物品をしまうための収納設備としての用途です。

収納としてのクローゼット

日本の伝統的な収納スペースである押入れとは異なり、クローゼットは洋式の生活に合わせて発展しました。特に、ハンガーパイプが設置され、コートやスーツ、シャツ、ドレスなどを吊るして収納できるようになっているのが特徴です。これにより、衣類の型崩れを防ぎ、シワになりにくい形で保管することが可能になります。内部には、棚や引き出しが備え付けられていることも多く、衣類だけでなく、バッグ、帽子、靴、小物類など、様々なものを整理して収納するのに役立ちます。

クローゼットには大きく分けて二つの形態があります。一つは、部屋の一角や壁面に設けられた、人が中に入れる程度の広さを持つ空間タイプのクローゼットです。これはウォークインクローゼットと呼ばれることもあります。もう一つは、据え置き型や壁面に設置するタイプの収納家具としてのクローゼットです。こちらは日本の箪笥に似た役割を持ちますが、デザインや内部構造は洋風であることが一般的です。

現代の住宅設計において、クローゼットは必要不可欠な収納スペースとして広く採用されています。限られた居住空間を有効活用し、生活感を抑える上で重要な役割を果たしています。

性的指向に関する比喩表現

収納としてのクローゼットが、「隠す」「しまう」というイメージを持つことから転じて、「クローゼット」という言葉は、自身の性的指向や性自認を他者に公にしていない状態や、そのようにふるまっている人を指す比喩的な表現としても使われます。これは、自分の内面を「クローゼットの中に閉じ込めている」というニュアンスを含んでいます。自己のセクシュアリティを他者に明かす行為は「カミングアウト」と呼ばれますが、「クローゼットにいる」という表現は、その対義語として使われることがあります。

楽曲や映画のタイトル

「クローゼット」という言葉やそれに類する名称は、様々な文化的作品のタイトルにも使用されています。これは、言葉が持つ「秘密」「隠されたもの」「内面」といったイメージや、具体的な「収納」の空間が物語の舞台やテーマと結びつくことから選ばれると考えられます。

音楽分野では、シンガーソングライターのaikoがアルバム『秋そばにいるよ』の中で「クローゼット」という楽曲を発表しています。また、Superflyもシングル『愛をからだに吹き込んで』に同名の楽曲を収録しており、この曲はドキュメンタリー番組『Crossroad』のエンディングテーマとして使用されました。さらに、神山羊はメジャー1stアルバムのタイトルを『CLOSET』としており、その中に表題曲も収められています。

映画のタイトルとしても複数存在します。2020年には、日本で進藤丈広監督、三濃川陽介主演による人間ドラマ映画『クローゼット』が公開されました。同年には、菅学監督が手掛け、栄川乃亜が主演を務めたオリジナルビデオ作品のサスペンス映画も『クローゼット』というタイトルでリリースされています。加えて、韓国でも2020年にキム・グァンビンが監督し、ハ・ジョンウが主演したミステリー映画が『クローゼット』として公開されており、同じ年に日韓で同名の映画が公開された形になります。

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