ケニー・バロン

概要

ペンシルベニア州フィラデルフィアに1943年 6月9日に生まれたケニー・バロンは、現代ジャズを代表する最も影響力のあるピアニストの一人です。数えきれないほどの録音にリーダーおよびサイドマンとして参加し、ビバップ以降の主流ジャズシーンにおいて、その洗練されたスタイルで確固たる地位を築いています。彼の兄は著名なテナー・サックス奏者のビル・バロン（1927年–1989年）です。

略歴

バロンのキャリアは、ジャズ界の巨匠たちとの共演から始まりました。初期にはディジー・ガレスピー・カルテットでピアノを弾く機会を得て、プロとしての第一歩を踏み出しました。1962年頃にはグループ「ジャズテット」にも一時的に在籍しましたが、彼らとの公式録音は残されていません。学業にも励み、1978年にはニューヨークのエンパイア・ステート・カレッジで芸術の学士号を取得しています。ミュージシャンとしての活動と並行して、バロンは教育者としても重要な役割を果たしています。ニュージャージー州にあるラトガース大学では25年以上にわたり、ピアノとハーモニーを教えていました。現在もニューヨークの名門ジュリアード音楽院で教鞭をとっており、アール・マクドナルド、ハリー・ピケンズ、アーロン・パークスといった、現代ジャズシーンで活躍する多くのピアニストを育成しています。

グループ活動

自身のリーダープロジェクトに加え、バロンは共同リーダーとしても注目すべきグループに参加しています。1982年には、メンバーとの強固な連携が特徴のグループ「スフィア」を結成し、複数のアルバムをリリースしました。また、2000年代にはクラシック音楽とジャズの融合を試みる「クラシカル・ジャズ・カルテット」でも活動しました。1980年代後半から1990年代初頭にかけては、サクソフォニストのスタン・ゲッツとの共演が特に知られており、『ヴォェジ』、『ボサ&バラード - ロスト・セッション』、『Serenity』、『ステラ・バイ・スターライトライヴ・アット・モンマルトル (Anniversary!)』、『ピープル・タイム』といった数々の印象的なアルバムを共に制作しました。

受賞・栄誉

バロンの長年にわたる功績は、数多くの賞や栄誉によって称えられています。グラミー賞にはこれまでに9回ノミネートされており、アメリカ・ジャズの殿堂へのノミネートも受けています。2009年には、学術的、芸術的に優れた業績を上げた人物が選ばれるアメリカ芸術科学アカデミーのフェローに選出されました。さらに、2010年にはバークリー音楽大学から音楽名誉博士号を授与されるなど、その貢献はジャズ界にとどまらず広く認められています。

主なディスコグラフィ

ケニー・バロンは驚くべき数のレコーディングを行っており、リーダー作だけでも50枚以上に及びます。彼のディスコグラフィは、ソロピアノからトリオ、カルテット、そして多様な編成での共演まで、幅広いスタイルを網羅しています。以下に、その膨大な作品群の中から代表的なリーダー・アルバムの一部と、主要な共同リーダー作を記します。

代表的なリーダー・アルバム（一部抜粋）

『ユー・ハド・ベター・リッスン』 - You Had Better Listen (1967年、Atlantic) ※with ジミー・オーウェンズ
『サンセット・トゥ・ドーン』 - Sunset to Dawn (1973年、Muse)
『イノセンス』 - Innocence (1978年、Wolf)
『トゥゲザー』 - Together (1978年、Denon) ※with トミー・フラナガン
『アット・ザ・ピアノ』 - Kenny Barron at the Piano (1982年、Xanadu)
『スクラッチ』 - Scratch (1985年、Enja)
『ホワット・イフ?』 - What If? (1986年、Enja)
『ライヴ・アット・ファット・チューズデイ』 - Live at Fat Tuesdays (1988年、Enja)
『ライヴ・アット・メイビーック・リサイタル・ホール Vol.10』 - Live at Maybeck Recital Hall Volume Ten (1991年、Concord Jazz)
『ピープル・タイム』 - People Time (1992年、EmArcy) ※with スタン・ゲッツ
『ワン・フィンガー・スナップ』 - Wanton Spirit (1994年、Verve) ※with ロイ・ヘインズ、チャーリー・ヘイデン
『ナイト・アンド・ザ・シティ』 - Night and the City (1998年、Verve) ※with チャーリー・ヘイデン
『カンタ・ブラジル』 - Canta Brasil (2002年、Sunnyside)
『ザ・トラヴェラー』 - The Traveler (2007年、Sunnyside)
『ブック・オブ・イントゥイション』 - Book of Intuition (2016年、Impulse!) ※Kenny Barron Trio名義
『コンセントリック・サークルズ』 - Concentric Circles (2018年、Blue Note) ※Kenny Barron Quintet名義

主な共同リーダー作（一部抜粋）

スフィア
『フォア・イン・ワン』 - Four in One (1982年)
Sphere On Tour (1985年)
クラシカル・ジャズ・カルテット
Tchaikovsky's Nutcracker (2001年)
The Classical Jazz Quartet Play Bach (2002年)

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