ゲパルド

ゲパルド：多用途を目指したロシアの短機関銃

ゲパルドは、1990年代のロシアにおいて、法執行機関向けに開発された多口径対応の短機関銃です。「チーター」を意味するその名の通り、様々な状況に対応できる汎用性の高さを目指しましたが、その複雑な構造が災いし、普及には至りませんでした。

開発の背景

1990年代初頭、ロシア国内の治安悪化に伴い、法執行機関はAKS-74Uなどのアサルトカービンを使用していました。しかし、5.45x39mm弾を使用するAKS-74Uは、法執行の現場では威力過剰であり、過度の貫通力が問題視されていました。そこで、より適切な銃器の開発が求められるようになります。

トライアルの結果、既存の9x18mm PM弾や9x18mm PMM弾では要件を満たせず、PP-19 "ビゾン"のみが基準を満たしていると判断されました。しかし、A.V.シェフチェンコ率いる開発チームは、既存の銃器の改良ではなく、独自の多口径短機関銃を開発することを目指しました。REX社と33491部隊の専門家の協力を得て開発は進められ、1995年に完成。ゲパルドの機構は特許として登録され、1997年に一般公開されました。

しかし、その後のトライアルでゲパルドが採用されることはなく、PP-19 "ビゾン"が法執行機関に採用され、広く普及することになりました。ゲパルドは一定の評価を得たものの、量産には至りませんでした。

構造と特徴

ゲパルドの最大の特徴は、その多口径対応機構です。ボルトやリターンスプリングなど、一部の部品を交換するだけで、様々な9mm口径の弾薬を使用することができます。

使用可能な弾薬

9x17mm弾
9x18mm PM弾
9x18mm PMM弾
9x19mm RG057弾
9x19mm パラベラム弾
9x21mm RG052弾
9x21mm RG054弾
9x30mm PP弾
9x30mm BT弾
9x30mm PS弾
9x30mm PB弾

これらの弾薬を使用するために、ゲパルドは複数のユニットを使用します。9x17mm弾、9x18mm PMM弾、9x19mm パラベラム弾、9x19mm RG057弾はユニット№2を、9x21mm RG052弾とRG054弾はユニット№3を、9x30mm PP弾とBT弾、PS弾、PB弾はユニット№4を使用します。

ゲパルドはブルパップ方式を採用しており、トリガーはレシーバー前端に配置されています。トリガーには、グロック17シリーズに見られるトリガーセーフティが備わっています。マズルには、AKS-74Uと同様のフラッシュハイダーや、独自のマズルブレーキ、サプレッサーなどを装着可能です。レシーバー、レシーバーカバー、ハンドガード、ガスブロックなどの部品は、AKS-74Uから約65〜70%が流用されており、生産コストの削減に貢献しています。また、合理的な構成による適切な重心位置と、効果的なマズルブレーキ、耐久性の高い銃床により、射撃試験では高い精度を示しました。

9x30mm グロム弾

ゲパルドのために開発された9x30mm グロム弾は、高いエネルギー保持力と貫通力を持ち、最大400mの範囲で6B2ボディアーマーを貫通することができます。

弾種

PP弾：高貫通弾
BT弾：装甲貫通曳光弾
PS弾：通常弾
PB弾：亜音速弾

派生型

ゲパルド-S：ハンドガードとガスブロックを短縮したコンパクトモデル。9x17mm弾専用。
ゲパルドカービン：9x30mm グロム弾を使用する民間向けセミオートカービン。銃身が延長され、特別な形状の銃床を備えています。多口径対応機構は省略されています。

登場作品

コール オブ デューティ ブラックオプス 6|コール_オブ_デューティ_ブラックオプス_6：JACKAL PDWとして登場。

まとめ

ゲパルドは、多口径対応という革新的なコンセプトを持ちながらも、その複雑さから普及には至らなかった短機関銃です。しかし、その開発過程で培われた技術は、後の銃器開発に活かされていると考えられます。

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