コアマモ

コアマモ（小甘藻）の詳細解説

コアマモ（学名：Zostera japonica）は、アマモ科に分類される海草の一種です。別名として小海藻とも呼ばれます。

特徴

コアマモは、浅い海に生息する多年生の沈水植物です。外見は藻類に似ていますが、花を咲かせ種子を作る種子植物であり、その点が藻類とは異なります。

分布: 温帯から亜熱帯の沿岸域に分布しており、日本では北海道から南西諸島まで広く確認されています。国外では、サハリンやカムチャツカ半島、中国南部、ベトナム、北アメリカ西岸などにも分布しています。南西諸島においては、沖縄島では小規模な群落が複数確認されていますが、種子島、奄美大島、宮古島、石垣島ではそれぞれ1箇所でのみ確認されており、植物地理学的に貴重な存在です。
形態: 茎（根茎）は非常に細く、直径は0.5～1.0mm程度です。砂泥の中を這うように伸びて分岐し、節から根を出して砂泥に絡みつきます。節からは葉をつける枝と、花序をつける枝が出ます。葉は細長い線形で、長さは10～25cm、幅は0.1～1.3mm程度。葉の縁は滑らかで、平行な葉脈が2～3本あります。葉の先端は丸みを帯びており、基部には葉鞘があります。雌雄同株で、6月頃に花を咲かせます。花序は肉穂花序で、先端に雄花、中央に雌花がつきます。種子は楕円形で、長さは約2cmです。
名前の由来: 近縁種であるアマモに比べて全体的に小型であることから、「コアマモ（小甘藻）」と名付けられました。

生育環境

コアマモは、水深1～2m程度の浅い海の砂泥地に生育することが多いです。汽水域でも見られることがあります。他の海草類と比較して乾燥に強く、潮が引いた際に水面から露出するような場所でも生育できます。河口付近に繁茂する傾向があります。

保護状況

コアマモは日本全国に分布していますが、沿岸域の埋め立てや水質汚染などにより、生育地が減少している地域があります。そのため、多くの都道府県でレッドデータブックに掲載され、保護の対象となっています。

青森県：重要希少野生生物（Bランク）
岩手県：Aランク
宮城県：要注目種
福島県：絶滅危惧I類
茨城県：危急種
千葉県：一般保護生物
神奈川県：絶滅危惧IB類
静岡県：準絶滅危惧
石川県：絶滅危惧II類
愛知県：準絶滅危惧
三重県：絶滅危惧IB類
和歌山県：絶滅危惧IB類
兵庫県：Aランク
岡山県：準危急種
徳島県：準絶滅危惧
愛媛県：準絶滅危惧
高知県：絶滅危惧IB類
福岡県：情報不足
佐賀県：絶滅危惧II類
長崎県：絶滅危惧IB類
熊本県：絶滅危惧IB類
大分県：絶滅危惧II類
宮崎県：準絶滅危惧
鹿児島県：準絶滅危惧
沖縄県：絶滅危惧II類

コアマモは、沿岸生態系において重要な役割を果たしています。生育環境の保全と回復が、今後の課題となっています。

参考文献

千原光雄 『標準原色図鑑全集 第15巻 海藻・海浜植物』 保育社、1970年
当真武 「琉球列島の海草‐I. 種類と分布」 『沖縄生物学会誌』37号、1999年
山下貴司 「コアマモ」 『福岡県の希少野生生物 -福岡県レッドデータブック2001- 』、佐賀県自然環境課、2001年
横田昌嗣 「コアマモ」 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物（菌類編・植物編）-レッドデータおきなわ-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2006年

外部リンク

oNLINE植物アルバム - コアマモの写真
日本のレッドデータブック検索システム - コアマモをレッドデータブックに掲載している県の地図

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