ゴーストップ事件

ゴーストップ事件の概要

ゴーストップ事件（ゴーストップじけん）は、1933年6月17日に大阪府大阪市北区の天六交叉点で発生しました。この事件は、陸軍兵と警察の巡査の間で起きた小競り合いが発端となり、その後、陸軍と警察の間で大規模な対立に発展したものです。また、この騒動は軍部が法律の枠を超えて行動し、政軍関係の変化をもたらすきっかけとなった事件としても知られています。

事件の経緯

事件は、陸軍第4師団の中村一等兵が赤信号を無視して交差点を横断した際、交通整理をしていた曽根崎警察署の戸田巡査に注意され、連行されるところから始まりました。中村は対抗し、巡査との間で殴り合いになり、この経緯で双方が負傷する結果となります。

この喧嘩を目撃した通行人が憲兵に通報した後、憲兵が到着しましたが、その２時間後、憲兵隊は曽根崎署に対し抗議を行なったのです。双方の主張は対立し、事件の重要性が徐々に上がり、最終的には陸軍省や昭和天皇にまで報告が届くことになります。

軍部と警察・内務省の対立

事件が発生したことに対し、第4師団参謀長は警察に謝罪を求める声明を出しましたが、大阪府警察部長はこれを拒否し、両者の間で対立が激化しました。東京においても、陸軍と内務省との対立が見られ、陸軍の大臣は大阪府警に謝罪を要求する一方、内務大臣と警保局は一切の妥協を拒みました。

この騒動が泥沼化した結果、両者は互いに訴訟を起こすことになり、新聞などのメディアはこの対立を「軍と警察の正面衝突」と大々的に報じました。事件の影響は広がり、民間人からも軍に対する非難が高まっていきました。

事件の処理にあたった高柳署長は過労で倒れ、後に急死しました。さらに、事件の目撃者が厳しい取調べに耐えられず自殺するという悲劇も発生しました。

和解へ向けて

最終的に事態を重く見た昭和天皇の特命により、寺内中将と白根県知事が調停に乗り出しました。結果として、事件発生から5ヶ月後、両者の関係者が集まり示談が成立しました。この和解内容は公表されることはなく、事件は幕を下ろしました。

事件の影響と時代背景

信号機や交通法規が未整備だった当時の日本では、軍と警察の権力闘争がしばしば起きていました。特にこのゴーストップ事件では、軍と警察の対立が顕在化し、軍部の権限が強化される契機となったと言われています。

また、事件は満洲事変後の社会情勢にも影響を与え、特に憲兵が行政行為を行う意識が高まる結果となりました。これにより、今後の軍と警察の関係性が再定義される重要な出来事となったのです。

この事件は、軍部が台頭し警察との権限争いが激化する中で、立法や行政と軍の関係に大きな影響を与えた歴史的な事件の一つと言えるでしょう。

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