サラリーマン死神

『サラリーマン死神』

概要

『サラリーマン死神』は、水木しげるが『ビッグコミック』にて1968年から1969年にかけて連載した漫画作品です。水木しげるの作品には欠かせないキャラクターである「死神」を主人公に据え、彼の悲哀に満ちた日常を描いています。

この作品に登場する死神は、『河童の三平』に登場する死神の遠い親戚という設定で、地獄のエンマ社長からノルマ達成のために地上に単身赴任を命じられます。一見恐ろしい存在である死神を、サラリーマンという現代社会に生きる人々にとって身近な存在に置き換えることで、社会の理不尽さや矛盾を浮き彫りにしています。

単行本は、1971年に朝日ソノラマから刊行された後、講談社や筑摩書房からも再編集され出版されています。

あらすじ

主人公の「死神106番」は、成績不振を理由にエンマ社長から地上への単身赴任を命じられます。彼のノルマは、1年間に12人の魂を地獄に連れて行くこと。しかし、死神といえど人間以上の力を持っているわけではありません。彼は、死神であると気づかれずに、直接手を触れることなく人間をあの世に送らなければなりません。ノルマを達成するために、死神106番は知恵を絞り、様々な作戦を試みます。

主な登場キャラクター

死神106番：本作の主人公。妻子を養うためにノルマ達成を目指すサラリーマン死神。人間を無理やりあの世に連れていくようなことはできず、人に気づかれないように、また直接手を触れずに殺害する必要があります。
青子：死神106番の妻。息子の骨太と共に地獄で暮らしていますが、地上で働く夫を心配し、彼の元へ訪れます。
貧乏神：一人でも多くの貧乏人を増やすというノルマを課せられています。彼も死神と同様に特別な力を持たず、貧乏にするために物を盗んだり火をつけたりすることは禁じられています。
パシャ：トルコ出身の死神。霊の自由化政策によって日本で働き始めました。安達が原の鬼婆と大口の取引をしています。
鬼婆：安達が原に住む堕胎医。妖怪や地獄の住人を相手に商売を行っています。
かくれ座頭：祭りの日に現れては、男を「かくれ里」へ連れ去る妖怪。
サトリ：人の心を読むことができる能力を持つ妖怪。人間よりも先に物事を理解できます。

アニメ

『ゲゲゲの鬼太郎』第2シリーズでは、水木しげるの他の作品を原作としたエピソードが多く制作されました。『サラリーマン死神』もその一つで、下記のエピソードがアニメ化されています。

第34話「死神とサトリ」（原作：『ねたみ』、『死神の招き』）
第38話「隠れ里の死神」（原作：『蒸発』）
第42話「死神と貧乏神」（原作：『枯れ葉』）
第45話「死神のノルマ」（原作：『涙のノルマ』）

また、『ゲゲゲの鬼太郎』第5シリーズにも、本作の設定を引き継いだ死神が登場しています。

書籍情報

『サラリーマン死神』 朝日ソノラマ〈サンコミックス〉、1971年4月
『水木しげるの不思議な世界3　死神の招き』 講談社〈KCスペシャル〉、1987年3月、ISBN 4-06-101299-1
『死神の招待状　妖怪ワンダーランド6』 筑摩書房〈ちくま文庫〉、1995年7月、ISBN 4-480-03066-2
* 『世界怪奇シリーズ〔全〕／サラリーマン死神〔全〕他』 講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2013年7月、ISBN 978-4-06-377522-8

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