スタンド!
『スタンド!』は、アメリカのバンド、
スライ&ザ・ファミリー・ストーンが
1969年にリリースした通算4作目の
スタジオ・アルバムです。彼らのキャリアにおいて、音楽的革新性と商業的成功が高次元で融合した極めて重要な作品として位置づけられています。後年の評価も高く、『
ローリング・ストーン』誌が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」の2020年版では、119位にランクインしています。
制作背景とリリース
このアルバムのレコーディングは、主に
サンフランシスコにあるパシフィック・ハイ・レコーディング・スタジオで行われました。制作には、3人組の女性ボーカルグループ、リトル・シスターが参加し、その歌声が楽曲に彩りを加えています。
『スタンド!』は、
1969年5月3日に世に送り出されました。リリース後、アメリカ国内の主要チャートで好成績を収め、特に『
ビルボード』の総合アルバムチャートである
Billboard 200では最高13位を記録。また、R&Bアルバムチャートでは3位まで上昇しました。商業的にも大成功を収め、300万枚を超えるセールスを達成。これにより、1960年代という激動の時代の音楽シーンを代表するアルバムの一つとしての地位を確立しました。
音楽性とテーマ
『スタンド!』は、
スライ&ザ・ファミリー・ストーンが得意とする
ファンク、ソウル、ロックといった多様な音楽ジャンルをクロスオーバーさせたサウンドが特徴です。彼らの作品の中でも特に芸術的な完成度が高いと評価されており、バンドの創造性の頂点を示す一枚と言えるでしょう。収録された楽曲は、後世の多くのアーティストに影響を与えることとなる重要なものばかりです。
アルバムには、聴く者を高揚させるアップテンポなナンバーが収められています。例えば、「Sing a Simple Song」や「I Want to Take You Higher」といった楽曲は、その名の通りシンプルながらも強力なグルーヴとメッセージを持っています。また、リスナーを勇気づけるようなポジティブなメッセージが込められた楽曲も含まれています。「You Can Make It If You Try」やアルバムのタイトルを冠した「Stand!」は、逆境に立ち向かう力を与えてくれる希望に満ちた歌です。
一方で、当時の社会情勢や人種問題に鋭く切り込んだ、政治的・社会的なテーマを扱った楽曲も重要な位置を占めています。「Everyday People」は人種や立場を超えた人々の共存を歌い、「Don't Call Me Nigger, Whitey」はより直接的なメッセージを投げかけるなど、その歌詞は今日でも色褪せることのない力強さを持っています。
収録曲
全ての楽曲の作曲は、バンドのリーダーである
スライ・ストーンの本名、シルヴェスタ・ステュワート名義で行われています。また、アルバム全体のプロデュースと編曲は、
スライ・ストーン自身が「ストーン・フラワー・プロダクション」として手掛けました。
サイド1
スタンド! - "Stand!" - 3:08
ドント・コール・ミー・ニガー・ホワイティ - "Don't Call Me Nigger, Whitey" - 5:58
アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイアー - "I Want to Take You Higher" - 5:22
サムバディズ・ウォッチング・ユー - "Somebody's Watching You" - 3:20
シング・ア・シンプル・ソング - "Sing a Simple Song" - 3:56
サイド2
エヴリデイ・ピープル - "Everyday People" - 2:21
セックス・マシーン - "Sex Machine" - 13:45
ユー・キャン・メイク・イット・イフ・ユー・トライ - "You Can Make It If You Try" - 3:37
2007年限定版再発CD ボーナストラック
2007年にリリースされた限定版CDには、以下のボーナストラックが追加収録されています。
"Stand!" (モノラル・シングルヴァージョン)
"I Want To Take You Higher" (モノラル・シングルヴァージョン)
"You Can Make It If You Try" (モノラル・シングルヴァージョン)
"Soul Clappin' II (ソウル・クラッピンII)" (かつての未発表作品)
* "My Brain (Zig-Zag) (マイ・ブレイン(ジグ・ザグ))" (かつての未発表作品、インストゥルメンタル)
『スタンド!』は、その多様な音楽性と普遍的なメッセージにより、リリースから数十年を経た現在もなお、多くの音楽ファンに聴き継がれている不朽の名盤です。