エヴリデイ・ピープル

スライ＆ザ・ファミリー・ストーンが1968年に発表した楽曲、「エヴリデイ・ピープル」（Everyday People）は、彼らの輝かしいキャリアにおいて、そして1960年代後半の社会文化史においても特筆すべき代表曲の一つです。バンドの中心人物であるスライ・ストーンが作詞・作曲を手がけました。

リリースとチャート成功

この楽曲は、1968年 11月1日にバンドの5枚目のシングルとして世に送り出されました。シングルのB面には、同じく彼らの代表曲の一つとなる「シング・ア・シンプル・ソング」が収められています。
発表後、アメリカの主要な音楽チャートで大きな成功を収めました。特に、ビルボード誌の総合シングルチャートであるHot 100では、1969年2月15日付から3月14日付にかけて、実に4週連続で第1位を獲得するという快挙を達成しました。また、ビルボードのHot R&B Singlesチャートでも2週連続で首位に輝き、そのジャンルを超えた影響力を示しました。1969年のビルボード年間チャートにおいては第5位にランクインし、その年の最も成功した楽曲の一つとして認められました。この商業的な成功は、楽曲がゴールドディスクに認定されるという形で裏付けられました。

楽曲のメッセージと文化的影響

「エヴリデイ・ピープル」は、その明るく親しみやすいメロディと、多様な人々が共に生きる平和、平等、そして連帯を高らかに歌い上げたポジティブなメッセージで知られています。この楽曲が持つメッセージ性は、人種間の緊張や社会の変化が著しかった1960年代後半のアメリカにおいて、多くの人々の共感を呼びました。結果として、この曲は当時のカウンターカルチャー・ムーブメントを象徴するアンセムの一つとしての地位を確立しました。
歌詞の中で登場する「different strokes for different folks」というフレーズは、「人それぞれ、考え方や好みは違う」という意味で、多様性を認め合うことの重要性を示唆しています。この言葉自体は、元々ボクサーのモハメド・アリがインタビューで述べたものですが、この楽曲の爆発的なヒットによってアメリカ社会に広く浸透しました。このフレーズは、後に人気を博したアメリカのシットコム『アーノルド坊やは人気者』の原題である"Diff'rent Strokes"のインスピレーション源としても知られています。

音楽的な側面

音楽的な観点から見ると、「エヴリデイ・ピープル」は革新的な要素も含んでいます。特にベースの演奏において、ラリー・グラハムによるスラップ奏法が商業レコードとして記録された初期の顕著な例の一つとされており、その後のファンクやリズム・アンド・ブルース、そしてポピュラー音楽全般におけるベース演奏のスタイルに大きな影響を与えたと言われています。

アルバム『スタンド!』との関連

シングルでの成功後、この楽曲は1969年 5月3日にリリースされたバンドの画期的な5作目のアルバム『スタンド!』に収録されました。『スタンド!』は「エヴリデイ・ピープル」を含むヒット曲群に支えられ、300万枚以上を売り上げる大成功を収め、スライ＆ザ・ファミリー・ストーンのキャリアにおける最高傑作の一つとして評価されています。
また、この楽曲は後の様々な編集盤やボックスセットにも収録されています。2013年に発売された4枚組のボックスセット『ハイヤー!』には、シングルとして発表された際のモノラル・バージョンが収められています。さらに、バンドが出演した伝説的なウッドストック・フェスティバルでの熱狂的なライブ演奏音源は、2009年にリリースされたボックスセット『The Woodstock Experience』で聴くことができます。

評価

「エヴリデイ・ピープル」の音楽史における重要性は広く認識されており、様々なランキングでその価値が示されています。例えば、世界的な音楽雑誌である「ローリング・ストーン」が選定した「史上最高の500曲」（2021年版）において、この楽曲は109位にランクインしており、その普遍的な魅力と影響力が改めて評価されています。

主なカバー・バージョン

その時代を超えた魅力とポジティブなメッセージゆえに、「エヴリデイ・ピープル」は多くのアーティストによってカバーされています。

アレサ・フランクリン: ソウルの女王、アレサ・フランクリンは1991年のアルバム『ホワット・ユー・スウェット』にこの曲のカバーを収録しました。アルバムの冒頭と末尾に異なるバージョンが収められ、末尾のバージョンは著名なリミキサー、シェップ・ペティボーンによるリミックスが施されています。このバージョンはシングルとしてもリリースされ、ビルボードのR&B/ヒップホップ・チャートで13位、ダンス・ミュージック/クラブ・チャートで33位、全英シングルチャートで69位を記録しました。
その他: アレサ・フランクリン以外にも、ペギー・リー、ダイアナ・ロス＆ザ・スプリームス、ウィリアム・ベル、ザ・ステイプル・シンガーズ、ビリー・ポール、ディオンヌ・ワーウィックといったソウルやR&Bの巨匠たち、さらにはジョーン・ジェットやジェフ・バックリィといったロック系のアーティストもこの名曲をカバーしており、その幅広い影響力を示しています。

もう一度検索