ステート・アマとは？意味をやさしく解説

ステート・アマ：国家が育成したアスリートたちの光と影

冷戦時代、旧ソ連や東欧諸国では、国家が全面的に支援するエリートアスリート、「ステート・アマ」が存在しました。これは、資本主義国におけるアマチュア選手とは全く異なる概念です。彼らは国家から報酬や生活の保障を受け、競技に専念できる環境を与えられました。しかし、その裏には、個人の自由を著しく制限された厳しい実態がありました。

国家による徹底管理：育成から競技まで

ステート・アマの育成は幼少期から始まりました。有望な選手は、国家が運営するスポーツ施設で、年齢に合わせた学校教育よりもスポーツ優先の環境で育てられました。倫理観やスポーツマンシップは軽視され、勝つことのみが求められました。

中国の卓球界では、選手同士の試合で、上層部からどちらに勝たせるか指令が出された事例もあると伝えられています。また、ドーピングも広く行われ、旧東ドイツの女子選手では、ドーピングによるホルモンバランスの崩れから多毛症になったケースもあったとされています。

選手は、インタビューでの発言や私生活まで国家によって厳しく管理され、恋愛の自由も制限されました。こうした状況から、ナディア・コマネチら、自由を求めて西側諸国へ亡命する選手もいました。

チェス界におけるステート・アマ

ステート・アマの体制は、チェス界にも見られました。ソ連では、各地から選抜された子供たちが国立のチェス学校で訓練を受け、世界選手権などを席巻しました。優秀な選手は、西側諸国に招待され、対局指導や著書の翻訳による外貨獲得にも貢献しました。

ソ連崩壊後のステート・アマ

ソ連の崩壊と東欧革命により、ステート・アマの多くは姿を消しました。スポーツ施設は閉鎖され、選手たちは職を失うこととなりました。一部の選手は、より良い環境を求めて西側諸国へ移住しました。大相撲力士の露鵬・白露山兄弟の父も、旧ソ連のアマチュアレスリングのステート・アマを育成する教官でした。

資本主義国における「偽装アマ」

資本主義国においても、マイナー競技を中心に、「カンパニーアマ」や「企業アマ」と呼ばれる、ステート・アマと似たような体制を持つ選手が多く存在します。これらの選手は、ステート・アマと同様に、実質的にはプロ選手であるにもかかわらず、アマチュアとして扱われるケースが多いです。

ステート・アマの遺産

ステート・アマは、冷戦時代の産物であり、国家によるスポーツ支配の象徴でした。その歴史は、スポーツにおける国家の役割や、アスリートの権利について、多くの示唆を与えてくれます。現代においても、中国や北朝鮮など、一部の国では、ステート・アマと同様のシステムが継続されている可能性があり、その実態は依然として注目に値します。

ステート・アマ