スレイヤーズ

『スレイヤーズ』は、神坂一先生によるライトノベル、およびそれを原作とするメディアミックス作品です。イラストはあらいずみるい先生が担当されています。1990年1月から富士見ファンタジア文庫より刊行され、シリーズ累計部数は2200万部を突破。ライトノベルというジャンルの裾野を広げ、ファン層を一般層にまで拡大した、まさに金字塔的作品と言えるでしょう。

概要

本作は、リナ＝インバースという自称「美少女天才魔道士」を主人公とした一人称視点の物語です。外伝では別のキャラクターの視点や三人称形式のエピソードも存在します。1989年のファンタジア長編小説大賞〈準入選〉受賞後、シリーズ化され、「月刊ドラゴンマガジン」での連載を経て、富士見ファンタジア文庫から単行本として刊行されました。長編と短編を並行して発表するスタイルは、後の多くの作品に影響を与えています。

本編は2000年に一旦完結しましたが、その後も外伝『スレイヤーズすぺしゃる』が継続。2008年からは『スレイヤーズすまっしゅ。』として改題されましたが、2011年に約20年に渡る連載が終了しました。しかし、2018年には本編が18年ぶりに再開され、第三部の展開が開始されました。

作品タイトルである「slay」には、「殺害する」という意味の他に、「（冗談などで人を）笑わせる、唸らせる」という意味もあります。本編は魔族を滅ぼすという意味での「slayers」ですが、外伝では読者を爆笑させるという意味も込められています。

あらすじ

原作の時間軸は、『すぺしゃる』『すまっしゅ。』が本編より前の話。本編は第8巻までが第一部、第9巻以降が第二部と分けられます。『すぺしゃる』も便宜上、第8巻を境に第一部・第二部と分けられています。

『すぺしゃる』

「世界を見て来い」という姉の一言がきっかけで旅に出たリナ＝インバース。観光よりもおいしい食べ物に惹かれ、旅の途中で自称ライバルのナーガと出会い、騒動を繰り広げます。

『すまっしゅ。』

リナは相変わらず各地で依頼を受けますが、その内容は一筋縄ではいかないものばかり。ナーガも巻き込み、今日も珍騒動が繰り広げられます。

第1巻『スレイヤーズ！』

旅の途中、リナは盗賊に襲われているところをガウリイに助けられます。ガウリイはリナの保護者をかって出て、共に旅をすることに。賢者の石を狙うゼルガディスや、赤法師レゾとの戦いを経て、リナはガウリイの持つ「光の剣」に興味を持ち、行動を共にします。

第一部

リナ一行は、アメリアやゼロスを仲間に加え、魔族が関わる事件の真相に迫ります。ゼロスの導きで異界黙示録に辿り着いた際、冥王フィブリゾが現れ、リナが魔族と関わってきた原因が明らかに。それは、リナがレゾを倒した際に使用した「重破斬（ギガ・スレイブ）」が、「金色の魔王（ロード・オブ・ナイトメア）」から力を借りたものだったからでした。フィブリゾは、その力で世界を滅ぼそうと画策します。

第二部

リナとガウリイは、「光の剣」に代わる武器を求め、旅を再開。トレジャーハンターのルークとミリーナと出会いますが、伝説の武器は見つかりません。各地で起きる不吉な兆候は、覇王グラウシェラーが降魔戦争を再現しようとしているのではないかという疑念を呼びます。そして、赤眼の魔王シャブラニグドゥの一片が覚醒し、再び魔王との決戦が始まります。

第三部

ルーク＝シャブラニグドゥとの戦いを終え、故郷へ帰るリナとガウリィ。アテッサでアメリア、ゼルガディスと再会し、ラトカへ向かう。ノーストとの出会いを経て、二人は結界の外の世界へと足を踏み入れ、帰還を目指す旅が始まります。

登場キャラクター

リナ＝インバース: 本作の主人公。自称「美少女天才魔道士」。豪放磊落な性格と強力な魔力の持ち主。
ガウリイ＝ガブリエフ: 金髪碧眼の美青年剣士。生真面目な性格でリナの相棒。
白蛇のナーガ: リナ以上の型破りな性格をした女魔道士。自称「リナの最大最強にして最後のライバル」。
ゼルガディス＝グレイワーズ: 凄腕の魔法剣士。リナを襲うが、後に仲間となる。
アメリア＝ウィル＝テスラ＝セイルーン: セイルーン王国の第二王女で巫女頭。正義感が強く、リナの仲間に加わる。
獣神官（プリースト）ゼロス: 神官姿の魔族。一見温厚だが、腹黒い一面も。
ルーク: 凄腕の魔法剣士。ミリーナに好意を抱いている。
ミリーナ: 凄腕の魔法戦士。ルークと行動を共にする。

世界観

『スレイヤーズ』の世界は、ヨーロッパを基調とした典型的なファンタジー世界です。人間以外にもドラゴンやエルフ、ゴブリンなどが存在し、魔法が日常的に使われています。世界の構造は、「混沌の海」に立てられた杖の上に平面世界が乗っているという独特な設定を持ち、複数の異世界が存在します。

リナたちの世界では、「赤眼の魔王（ルビーアイ）」シャブラニグドゥと「赤の竜神（フレアドラゴン）」スィーフィードが争い、約5000年前に魔王は封印され、竜神は滅びました。人々はスィーフィードとその分身を信仰しています。

メディアミックス展開

『スレイヤーズ』は、小説以外にも、漫画、アニメ、テーブルトークRPG、コンピュータRPGなど、様々なメディアで展開されています。『新世紀エヴァンゲリオン』や『機動戦艦ナデシコ』と並んで、角川グループが得意としたメディアミックスビジネスモデルを完成させた、日本アニメビジネスにおいても重要な位置づけを持つ作品です。

特にアニメ版は、1995年から2009年にかけて、テレビアニメシリーズが5作品、劇場用アニメが5作、OVAとラジオドラマがそれぞれ2作発表され、幅広い層に人気を博しました。主人公リナ役を演じた林原めぐみさんの演技も、作品の魅力を高める大きな要素となっています。

2020年には、富士見ファンタジア文庫から本編が初めて刊行された1990年から30周年を迎えたことを記念して、様々な催しやグッズ販売が行われました。

まとめ

『スレイヤーズ』は、ライトノベルの歴史を語る上で欠かせない作品であり、その魅力は今も色褪せることなく、多くのファンを魅了し続けています。リナ＝インバースの冒険は、これからも様々な形で語り継がれていくことでしょう。

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