セガ3D復刻プロジェクト

『セガ3D復刻プロジェクト』は、日本のゲームメーカーであるセガ（旧セガゲームス）が2012年から2017年にかけて推進した、ユニークなゲーム移植企画です。このプロジェクトの主眼は、同社の長い歴史の中で生み出されてきたアーケードゲームや家庭用ゲームソフトの傑作群を、ニンテンドー3DS向けに最適化し、現代に蘇らせることにありました。特に、3DSが持つ裸眼立体視機能を活用し、懐かしいゲーム体験に新たな視覚的な奥行きを加えることを目指しました。移植作業は、高い技術力を持つ有限会社M2がセガの緊密な協力のもとで担当しました。

プロジェクトの発足と目的

プロジェクトの genesis は、ニンテンドー3DSのバーチャルコンソールで提供されていたセガの過去作品配信サービスに遡ります。当時のバーチャルコンソールはエミュレーター上でゲームを動作させる形式が主流でしたが、アーケードゲームの高精度な再現には3DSのハードウェア性能だけでは限界がありました。こうした状況の中、シリーズプロデューサーである奥成洋輔氏が、2010年のE3で展示されていた任天堂の『3Dクラシックスゼビウス』の立体視表現に強い感銘を受けたことが、プロジェクト立ち上げの直接的な契機となりました。奥成氏は、当時「SEGA オブアメリカ」の社長としてネットワーク関連事業を統括し、後にセガゲームスの代表取締役社長CEOとなる里見治紀氏にこのアイデアを持ちかけ、プロジェクトが正式に発足することとなったのです。

プロジェクトの目的は多岐にわたりました。一つは、長年のセガファンを含む幅広いレトロゲーム愛好家の期待に応えること。そしてもう一つは、ニンテンドー3DSに標準搭載されている裸眼立体視機能を過去のゲームに応用するという、技術的に非常に挑戦的な試みを行うことでした。このため、エミュレーションではなく、オリジナル作品のプログラムをニンテンドー3DS上で直接、効率的に動作させる「ネイティブ移植」という手法が採用され、開発が進行しました。

開発体制と特徴

開発を担った有限会社M2のスタッフ陣には、PlayStation 2時代にセガが展開した過去作移植シリーズ『セガエイジス2500シリーズ』に携わっていた経験豊富な技術者が多数参加していました。『セガエイジス2500シリーズ』で高い評価を得た、オリジナル版への徹底した忠実性（いわゆる「完全移植」）や、原作の雰囲気を損なわずに新たな遊び方を提案する追加要素といったコンセプトは、本プロジェクトでも中心的な思想として引き継がれました。例えば、単なるグラフィックの立体視化だけでなく、ゲームバランス調整、サウンドモード、ゲーム進行を助ける機能（途中セーブなど）、さらには全く新しいゲームモードの追加など、様々な改良や新要素が盛り込まれ、単なる過去の再現に留まらない、付加価値の高い移植版が生み出されました。

リリース形態と展開

作品は主に二つの形態でリリースされました。一つはニンテンドーeショップを通じたダウンロード配信、もう一つは複数のタイトルをカップリングしたパッケージ版です。

ダウンロード配信

ダウンロード配信は、初期の「第1期」と後期の「第2期」に分かれて展開されました。2012年12月には記念すべき第1弾として『スペースハリアー 3D』が配信を開始。その後、合計16タイトルがリリースされました。

プロジェクトは当初、『3D サンダーブレード』（2014年8月配信開始）と、後述するパッケージ版『セガ3D復刻アーカイブス』第1弾の発売をもって「完了」とされる予定でした。しかし、日本での展開後に海外でのリリースを進めるにあたり、「かつて世界的に人気を博したジェネシス（北米・欧州版メガドライブ）のソフトもラインナップに加えたい」という強い要望が寄せられました。これに応える形で、急遽「第2期」としてメガドライブ作品の移植開発・リリースが決定されました。2015年からはメガドライブタイトルの移植作が加わり、『3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』などがリリースされています。

また、シリーズ初期には背景とキャラクターの層が複雑に重なり合うスクロール面が少ないゲームを選定する傾向があり、手作業での3D立体視化に手間がかかるという理由から、セガ・マークIII作品の移植は難しいと考えられていました。しかし、開発チームの努力により、最終的にはマークIII作品も手作業で丁寧に立体視化を施し、『ファンタジーゾーンII』などがラインナップに追加されました。

パッケージ版

ダウンロード専売ではリーチしづらい層へのプロモーションや、物理メディアで作品をコレクションしたいというファンの要望に応えるため、配信タイトルの一部をまとめたパッケージ版が企画されました。2014年12月18日には、配信済みの人気タイトル6本にボーナス収録2本を加えた『セガ3D復刻アーカイブス』が発売され、好評を博しました。

翌2015年12月23日には第2集となる『セガ3D復刻アーカイブス2』が発売。この巻からは、パッケージ版限定の新規移植タイトルが本格的に収録されるようになります。さらに、前作とセットになった『セガ3D復刻アーカイブス1&2 ダブルパック』も同時発売されました。

2016年12月22日には、シリーズ最終章となる第3集『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』が発売されました。これに合わせて、『セガ3D復刻アーカイブス1・2・3 トリプルパック』もリリースされています。

各パッケージ版には、ダウンロード配信されていないタイトルや、他のパッケージ版のプレイ履歴と連動してアンロックされるシークレットタイトルがボーナスとして多数収録されており、パッケージならではの価値を提供しました。

- セガ3D復刻アーカイブス: スペースハリアー3D、アウトラン3D（マークIII/マスターシステム版）をボーナス収録。
- セガ3D復刻アーカイブス2: パワードリフト、ぷよぷよ通（アーケード）、ファンタジーゾーンII オリジナル、メイズウォーカー、ファンタジーゾーン（マークIII）をボーナス収録。一部タイトルは『アーカイブス1』のプレイ履歴でアンロック。
- セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE: ターボアウトラン、エイリアンシンドローム（アーケード）、コラムス、サンダーフォースIII（メガドライブ）を新規収録。さらに、チャンピオンボクシング（SG-1000）、ガールズガーデン（SG-1000）をシークレットボーナス収録。これらのシークレットタイトルは、『アーカイブス1』または『アーカイブス2』のプレイ履歴でアンロックされます。（※『サンダーフォースIII』は、セガがテクノソフトの版権を取得したことにより収録が実現）

受賞と終焉

本プロジェクトの高い技術力と完成度は外部からも評価され、2014年12月には「国際3D先進映像協会グットプラクティス・アワード 2014 本賞」を受賞しています。

プロジェクトは2017年をもって事実上終了しましたが、ダウンロード版の販売はしばらく継続されました。しかし、2022年12月21日には、『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』のダウンロード版と、『3D アフターバーナーII』の配信・販売が終了となりました。

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