チネチッタ

チネチッタ（Cinecittà）

チネチッタは、イタリアのローマ郊外に位置する重要な映画撮影所であり、名称はイタリア語で映画を意味する「cinema」と都市を示す「città」を組み合わせたものです。これにより、「映画都市」という意味が込められています。1930年代にイタリアの指導者ベニート・ムッソリーニの下で建設され、当時のイタリアにとって初めての大規模な映画撮影所となりました。その後、チネチッタはイタリア国内で最大級のスタジオとしての地位を確立し、豊富な屋外セットやスタジオ、フィルム編集施設を兼備しています。

歴史的背景と影響

1935年には、イタリア国立映画学校が隣接して設立され、イタリアを代表する数多くの映画監督を育成しました。特に、日本の映画監督である増村保造がこの学校で学んだことも特筆されています。第二次世界大戦中には、連合軍による空襲を受けて一部が破損しましたが、戦後は著名な監督たちによる作品が多数製作されました。フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』や『8 1/2』、ルキノ・ヴィスコンティ監督の『白夜』、さらにはアメリカの大作『ベン・ハー』もここで撮影されるなど、映画史における重要な場となりました。

国営化と現代のチネチッタ

1980年代には、イタリア映画の低迷により収益が悪化し、チネチッタは破産の危機に直面しました。しかし、国営化によってこの危機を乗り越えました。この頃、フェリーニはチネチッタ自体をテーマにしたドキュメンタリー映画『インテルビスタ』を制作し、その存在を再確認させました。

近年、映画の撮影に使われる機会は減少しているものの、周辺地域は発展を続けており、新たにローマ地下鉄A線の駅が設けられ、多数の住宅街やオフィスビル、大型ショッピングセンター「Cinecittà 2 Centri Commerciali」が建設されています。2007年には内部で火災が発生し、約4000平方メートルが焼失するという事態もありました。

チネチッタではテレビ番組の収録も頻繁に行われており、特に「カナーレ5」の「グランデフラテッロ」などで多く利用されています。

観光と展示

一般に対する公開は2011年に初めて行われ、特定の期間で観光客が訪れることができるようになりました。主なスタジオへの立ち入りはできませんが、展示会場では『ベン・ハー』や『クレオパトラ』、そして『グラディエーター』に使用された美術小道具、さらにはフェリーニの直筆の絵コンテや衣装類が並ぶ特設スペースが設けられています。また、オープン・セットのガイドツアーも行われ、過去に製作された名作映画の背景を感じながら見学できる機会も提供されています。

チネチッタでの撮影作品

チネチッタで制作された主な映画には『クォ・ヴァディス』（1951年）、『ローマの休日』（1953年）、『甘い生活』（1960年）、『クレオパトラ』（1963年）などが挙げられ、その影響力と魅力は現在も衰えていません。映画の歴史において重要な役割を果たすチネチッタは、ただの撮影所以上の価値を持つ文化的なシンボルとして、多くの人々を惹きつけています。

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