チョイア

絶滅海綿動物 チョイア (Choia)

チョイア（Choia）は、古生代初期、具体的には約5億4千万年前に始まるカンブリア紀の後期から、約4億8千8百万年前に終わるオルドビス紀前期にかけての時代に地球上の海に生息していたとされる、すでに絶滅した海綿動物の一属です。このユニークな生物は、その特徴的な形態と、化石から推測される当時の生態の一端を示す存在として、古生物学において重要な研究対象となっています。

形態的特徴

チョイアの姿は非常に独特で、見る者に強い印象を与えます。その胴体は、中央がわずかに盛り上がった平たい円錐形をしており、その周囲からは、多数の細長い骨格要素がまるで星の光のように放射状に伸びています。これらの骨格要素は、他の海綿動物と同様に、微細な骨針（スピキュール）が集まって形成されたと考えられています。かつては、この放射状の骨によって体が支えられ、海底に直接根を下ろすことなく、そのまま横たわっていたか、あるいは海中を漂っていた（浮遊性であった）と考えられていました。その形状から、まるでサーカスのテントの頂部のような外見をしていたと形容されることもありました。

生活様式と生態

チョイアの具体的な生活様式については、長い間推測の域を出ませんでしたが、近年の化石研究により新たな知見が得られています。特に、モロッコのオルドビス紀前期の地層から発見された保存状態の良い化石の分析から、この生物は実際には海底からある程度の高さに位置しており、微細な骨針が集まってできた細長い柄のような構造を介して、海底の基質に固定されていた可能性が高いことが示唆されています。これは、従来の「付着しない、あるいは浮遊する」というイメージを覆す重要な発見でした。この柄によって、チョイアは海底の泥から離れて、より効率的に濾過摂食を行える位置を確保していたと考えられます。

摂食行動については、他の海綿動物と同様に、海中の懸濁物を濾し取って栄養を得ていたと推測されています。海水は、この円錐形の胴体を構成する多数の骨格要素の間隙から内部空間へと流れ込み、そこで食物粒子が捕らえられます。その後、濾過された水は、おそらく体の中心にある比較的大きな開口部（オスキュラムに相当する構造）から排出されていたのでしょう。このような構造は、効率的に水流を取り込み、生活に必要な物質を獲得するために適応したものと考えられます。

発見地と大きさ

チョイアの化石は、世界各地のカンブリア紀やオルドビス紀前期の堆積層から発見されています。特に有名な産地としては、カナダのブリティッシュコロンビア州にある、優れた化石保存状態で知られるバージェス頁岩、中国の雲南省で発見された初期の動物群である澄江動物群が見つかる地層、そしてアメリカ合衆国ユタ州のウェラー頁岩などがあります。これらの産地は、いずれも当時の浅い海の環境を知る上で非常に重要な場所であり、チョイアが比較的広範囲に生息していたことを示しています。

特に、バージェス頁岩の中でも著名な化石産出地であるグレーター・フィロポッド・ベッドからは、多数のチョイアの個体が発見されています。この特定の層準からは、127個体ものチョイアの化石が確認されており、これはグレーター・フィロソッド・ベッドに生息していた動物群全体の約0.2パーセントを占めていたことが分かっています。この割合は非常に高いというわけではありませんが、当時の生態系においてチョイアが一定の存在感を持っていたことを示唆しています。

成体のチョイアの大きさは、胴体の直径が平均でおよそ28ミリメートル程度だったと考えられています。これは現代の感覚からすると比較的小さな生物ですが、カンブリア紀からオルドビス紀初期の生態系においては、その独特な形態と生活様式をもって、多様な生物群の一員として繁栄していたことでしょう。

チョイアの研究は、初期の海綿動物の進化や、カンブリア紀・オルドビス紀の海洋生態系の理解を深める上で、今なお重要な貢献をしています。

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