ツールチップ

ツールチップとは

ツールチップとは、コンピュータのグラフィカルユーザーインターフェイス（GUI）における表示要素の一つです。マウスカーソルなどのポインティングデバイスを特定の要素に重ねる（マウスオーバー）と、その要素の周辺に小さな領域が表示され、注釈や補足説明などが表示されます。

概要

GUIにおいて、ラベル文字列や画像だけでは十分に説明しきれない情報を補完する目的で、ツールチップは利用されます。例えば、ボタンには短いラベルしか設定できない場合でも、ツールチップを使えば、ボタンを押した際の動作や効果を詳細に説明できます。これにより、ユーザーはボタンを押す前にその機能を把握でき、初めて利用するユーザーにとっても分かりやすい操作性を実現できます。また、ツールチップは通常は非表示なので、画面スペースを有効活用できるというメリットもあります。

ツールバーの小さなアイコンなど、ラベルの代わりにアイコンを使う場合にもツールチップは有効です。タブブラウザでは、ドキュメントタイトルが長すぎてタブに収まらない場合、ツールチップを利用することで、アクティブにせずに内容を確認できます。

ただし、ツールチップは一定時間で自動的に消えるため、長い説明には不向きです。また、ツールチップの存在を知らないユーザーには気づかれにくく、表示位置によっては下にある要素を隠してしまうことがあります。さらに、スタイラスペンなどでは、手ブレでうまく表示できない場合や、タッチ操作では利用できないという問題点もあります。

表示する手順

ツールチップは、主にマウスカーソルの操作によって表示されます。ユーザーがカーソルを要素にマウスオーバーすると、原則としてカーソルの真下から右または右下に向かって小さな枠が表示され、その中に補足説明などが表示されます。ツールチップが消える条件は実装によって異なりますが、一定時間経過後に自動的に消えるものや、カーソルを要素から外すと消えるものがあります。

名称

ツールチップは、Microsoft Officeでは「ポップヒント（ScreenTips）」と呼ばれています。開発者向けのMSDNライブラリでは、「ツールヒント（Tooltips）」と「情報ヒント（Infotips）」の2つに分類されています。Microsoft Officeの拡張ポップヒント（Enhanced ScreenTips）は、追加情報や図、ヘルプ記事へのリンクを含んだものです。また、ウィキペディアでは、脚注にマウスオーバーすると脚注ツールチップ（Reference Tooltips）が表示されます。

類似の機構

Microsoft Windowsでは、テキストボックスなどで使われる吹き出し型のバルーン（Balloons）が類似の機構として存在します。これは、Win32ツールチップコントロールの一種です。Mac OSにも、かつてバルーンヘルプという類似の機構がありました。

古いソフトウェアでは、ステータスバーに選択したツールの説明を表示することがありますが、これは通常ツールチップとは呼ばれません。また、ツールチップの代わりにマウスオーバーでプレビューを表示する機能もあります。

応用例

ツールチップは、デスクトップアプリケーションだけでなく、ウェブページでも広く使われています。多くのウェブブラウザでは、HTMLの`title`属性を、要素にカーソルを重ねた際にツールチップとして表示します。ウィキペディアでは、画像やハイパーリンクにカーソルを重ねるとツールチップが表示されます。一部のブラウザでは、`img`要素の`alt`属性も`title`属性と同様にツールチップとして表示されますが、`title`属性が優先されます。

タッチUIにおける問題点

ツールチップはマウスオーバーを前提とするため、タッチパネルでの操作には不向きです。タッチ操作では、タップ（クリック）とホバーを区別できないため、マウスのホバー操作をシミュレートすることが困難です。スマートフォンやタブレットなど、タッチパネルがメインのデバイスでは、この問題が顕著になります。

この問題を解決するために、アプリケーションやウェブページの設計を見直し、タッチ操作に対応させる必要があります。ただし、一部のブラウザでは、タッチによるホバー操作をサポートする拡張機能も提供されています。また、Androidでは、ビューを長押しすることでツールチップを表示できます。

まとめ

ツールチップは、GUIの操作性を向上させるための便利なツールですが、その特性を理解し、適切な場面で利用することが重要です。特に、タッチUIにおける課題を考慮し、ユーザーが快適に操作できるインターフェイスを設計する必要があります。

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