ツールバー

ツールバーとは



ツールバー(英語: toolbar)とは、アプリケーションソフトウェアの機能を割り当てたアイコン付きのボタンなどが置かれる帯状の領域のことです。

概要


アプリケーションの機能は通常、メニューに配置され、マウスでクリックすることで実行されます。しかし、メニューは階層構造になっているため、深い階層にある機能にアクセスするには手間がかかります。そこで、よく使う機能をボタンとして画面上部に配置し、直接クリックできるようにしたのがツールバーです。ツールバーには、ボタンの他に、スピンボタン、ラジオボタン、コンボボックス、ドロップダウンリスト、チェックボックス、区切りマークなども配置できます。ツールバーは必ずしも全てのアプリケーションに存在するわけではなく、例えばMicrosoft Windowsメモ帳にはツールバーはありません。また、画面を広く使うために、ユーザーが設定によって非表示にすることも可能です。

伝統的なMicrosoft Windowsのアプリケーションでは、ウィンドウのタイトル領域の下にメニューバーが置かれ、その下にツールバーが配置されることが一般的です。ツールバーは通常、ウィンドウの横幅いっぱいに広がり、複数段重ねて表示することもできます。Microsoft Office 2003のように機能が多いアプリケーションでは、「ドッカブルツールバー」がよく使われます。ドッカブルツールバーは、移動可能な小型のツールバーで、「切り取り」「コピー」「貼り付け」など、同じ系統の機能を持つボタンが配置されます。ドッカブルツールバーはツールバー内に配置され、ユーザーがカスタマイズできることが多いです。例えば、ボタンの配置をドラッグ&ドロップで変更したり、ツールバーから出してフローティングパレット化したり、再びツールバーにドッキングしたりできます。

Microsoft WindowsのツールバーはWindowsのコモンコントロールの一つであり、comctl32.dllに実装されています。Windows 95の時代から存在し、長年にわたって改良が重ねられてきました。しかし、MicrosoftはOffice 2007以降、ツールバーの代わりにリボン (GUI) の採用を増やしています。

用語



クールバー(英語:CoolBar)


ドッカブルツールバーの一種で、Microsoft Visual Basicのコントロールの一つです。同時期のInternet Explorerなどでも使われました。Visual Basic 5.0 SP2以降のComct332.ocxに実装され、マウスカーソルアイコンの上に移動するとアイコンが浮かび上がるような視覚効果がありました。Microsoft Visual C++のMFCコントロールでは、親をRebarコントロール、子をバンドと呼びます。

ウェブブラウザにおけるツールバー


一般的なウェブブラウザには、戻るボタン、進むボタン、ホームボタン、更新ボタン、中止ボタンなどが配置されたツールバーがあります。また、ユーザーがよく使うブックマークやブックマークレットをボタン化して配置できるツールバーも用意されていることが多いです。前者はInternet Explorerでは「コマンドバー」、Firefoxでは「ナビゲーションツールバー」と呼ばれています。後者はInternet Explorerでは「お気に入りバー」、Firefoxでは「ブックマークツールバー」、Google Chromeでは「ブックマークバー」と呼ばれています。

これらに加えて、ブラウザメーカー以外の第三者(サードパーティー)が提供し、ユーザーが任意でインストールできるツールバーも存在します。大規模なポータルサイトは、ニュース、ウェブメール、オークションなど様々なサービスを提供しており、サードパーティーのツールバーはこれらのウェブサイトやウェブアプリケーションの機能をボタンに割り当て、複数のサービスを横断的に利用できるようにします。ツールバーは独自の付加機能を持つこともあり、検索結果を一覧表示したり、文章中の検索キーワードをハイライト表示したり、検索履歴やキーワードの入力補完機能を提供したりします。ボタンはユーザーがカスタマイズでき、統合するサービスを追加できる場合もあります。

ツールバーは、ユーザーがインストールを許可するとウェブブラウザに常駐し、ポータルサイトにとってはユーザーを自社のサービスに繋ぎとめるための販促ツールとして機能します。ツールバーの中には、利用を促すためにユーザーにポイントを付与するものもあります。検索サービスを提供する会社にとっても、ツールバーの存在は非常に重要です。例えば、楽天ツールバーには月間100万人のユーザーがおり、月間約2億件の検索を行ってGoogle AdSenseの広告を表示しています。アメリカでは総検索数の約1割がツールバーから行われているというデータもあります。また、ツールバーの中には、ユーザーが閲覧したウェブサイトを集計し、インターネット視聴率を算定する機能を持つものもあります。例えば、Alexaツールバー、Google ツールバー、Yahoo!ツールバーなどが有名です。インターネットの無料コンテンツは広告によって支えられていることが多いため、広告費算定の基礎となる視聴率の収集は不可欠です。収集した情報の一部は、アレクサ・インターネットGoogleのDoubleClick Ad Plannerなどで公開され、ユーザーに還元されています。一方で、ウィルス対策ソフトの中には、情報収集機能を持つツールバーをアドウェアとして検出するものがあり、セキュリティを不安視する人もいます。また、ツールバーの中にはアフィリエイトプログラムに参加して収入を得ているものもあります。例えば、検索プラグインの一種であるJWordを同梱するツールバーは、インストール1件につき10円の成功報酬を得ているようです。

歴史



最初の常駐型サードパーティー製ツールバーが登場したのは、Internet Explorer 3.0の頃です。Alexaがツールバーを発表し、ウェブサイトのトラフィックを測定したり、ウェブサイトの情報(所有者や最終更新日時など)を表示しました。その後、閲覧中のウェブサイトと類似するウェブサイトを表示する機能も追加されました。当時はまだGoogleがなく、ブロードバンド回線も普及していなかったため、コンテンツを探すのも閲覧するのも大変でした。また、ウェブブラウザも開発途上で、ツールバーは現在のような外観ではなく、ウェブブラウザのサイドバーやフッターに表示されていました。

現在のような外観になったのは、Internet Explorer 5の頃です。ActiveXコントロールで作成されたYahoo! Companionは、ブラウザのツールバーに表示することができました。1999年から2002年にかけて、ツールバーのブームが起こり、プロバイダ、ポータルサイト、企業ウェブサイトが次々と自社のツールバーを発表しました。ツールバーがあまりにも多く、すべてを表示しきれないほどでした。2003年の調査によると、ユーザーの約半分がツールバーを利用したことがあり、Googleツールバー、Exciteツールバー、Yahoo!コンパニオンが人気でした。検索機能が人気で、ハイライト機能や辞書機能も一定の支持を得ていました。ちょうどこの頃、日本ではインターネットが本格的に普及し、インターネット利用率は2001年に5割を超え、利用者は1999年から2002年の3年間で約2.6倍に増加しました。ツールバーは、新規顧客を獲得しリピーターにするための競争が激化しました。

2004年、ブロードバンド回線の利用率が5割を超え、常時接続が当たり前になりました。ユーザーに人気の高いツールバーを巡り、マイクロソフトGoogleの戦いが始まりました。この年、GoogleGmailのサービスを開始し、Gmail Notifierでツールバーに統合しました。また、ツールバーと一緒にGoogleデスクトップを配布し、マイクロソフトからデスクトップの覇権を奪おうとしました。Googleは2004年にリリースされたFirefoxにもツールバーを供給し、検索の成功報酬を支払うことでInternet Explorerのシェアを脅かしました。堀江貴文が自社のポータルサイトに集客するために、プロ野球球団買収やニッポン放送買収を試みたのもこの時期です。ライブドアポータルサイトの整備を行い、ツールバーを発表しました。堀江の思惑通り、BtoC市場の市場規模は2005年の3兆4560億円から2010年には7兆7880億円へと倍増しました。

Yahoo!JAPANは2008年から、自社のツールバーをカスタマイズした提携企業向けのツールバーを大量に発表しました。2012年現在、「ANA」ツールバー(2008年)、「ニッセン」ツールバー(2009年)、「海物語」ツールバー(2010年)、「ラブベリー」ツールバー(2011年)など、約50個のツールバーが発表されています。一方、2008年はノートパソコンの比率が約7割となり、ネットブックやiPhoneのような新しい形態のパソコンが登場した時代でもありました。これらの端末は、デスクトップパソコンに比べて画面サイズが小さいため、従来のブラウザのGUIではWebページの表示領域が狭くなってしまいました。この時期に発表されたGoogle Chrome(2008年)、Firefox 4(2010年)、Internet Explorer 9(2011年)などのウェブブラウザは、検索ボックスとアドレスバーを統合し、最小限のインターフェースでWebページをより広く表示できるようにGUIを再設計しました。ツールバーも面積削減の対象となり、ウェブブラウザの速度競争などもあって、常駐型のツールバーは時代に合わなくなっていきました。GoogleGoogle Chrome用のGoogleツールバーを発表せず、Firefox用のGoogleツールバーの開発も停止しました。

2017年10月31日、Internet Explorer版Yahoo!ツールバーのサービスが終了しました。Google Chrome版とFirefox版のサービスもすでに終了しており、すべてのブラウザでサポートされなくなりました。これに対し、窓の杜は「Webブラウザー向けツールバーの時代に幕が下りる」と報じました。

沿革



1996年8月 - Internet Explorer 3が公開
1997年7月 - Alexa Toolbarが公開。翌年にはAlexa 2.0が公開
1999年3月 - Internet Explorer 5が公開され、Web Accessoriesツール集としてAlexa Explorer barやAltaVista社のAV Power Toolsなどが配布
1999年5月 - Yahoo! Companionが公開
2000年6月 - gooスティックが公開
2000年12月 - Googleツールバーが公開
2001年6月 - インフォシークツールバーが公開
2001年9月 - アメリカでインターネット・バブルが崩壊し、日本でYahoo! BBがサービスを開始
2001年12月 - エキサイトバーが公開
2002年3月 - 日本版のYahoo!コンパニオンが公開
2002年4月 - BIGLOBEツールバーが公開
2002年5月 - asahi.comツールバー 1.0AとLycosツールバー v2.0が公開
2002年12月 - MapFan Webツールバーが公開
2003年12月 - はてなツールバーが公開
2004年3月 - MSNツールバーが公開
2004年4月 - Amazon.comのA9 Toolbarが公開され、Gmailがサービスを開始
2004年11月 - GoogleツールバーやGoogleデスクトップなどを含む「Googleパック」が公開
2005年5月 - YOMIURI ONLINEのYOLツールバーが公開
2005年6月 - livedoorツールバーが公開
2007年8月 - mixiツールバーが公開
2008年6月 - Yahoo!JAPANがANAツールバーなどの提携ツールバーを大量に発表しはじめた
2008年9月 - リーマン・ショックが起きた。楽天ツールバーが公開
2008年10月 - amazon.comのアソシエイト・ツールバーが公開
2009年3月 - AOLツールバーが公開
2009年7月 - NAVERツールバーが公開
2009年12月 - Bingバーが公開
2011年4月 -「ラブベリー」ツールバーやInternet Explorer 9が公開
2011年7月 - Firefox用のGoogleツールバーの開発が停止
2017年10月 - Yahoo!ツールバーのサービスが終了

主なツールバー



Yahoo!ツールバー
Yahoo!版は1999年、Yahoo! Japan版は2002年に登場し、当初はYahoo!コンパニオンと名づけられていた。日米共に人気が高く、アメリカでは2億8200万クエリー/月(2005年7月)の検索があり、ツールバーからの検索シェアの半分を占めた。日本でもTOP3に入る人気(2003年、2007年)で、特に若者(10代)と高齢者(60代)に支持されていた(2004年)。日本では2008年から提携企業用にカスタマイズしたツールバーを大量に発表しており、2012年にGoogle ChromeとSafariに対応した。2017年10月31日サービス終了。
Google ツールバー(Google
@niftyツールバー(ニフティ2018年3月15日サポート終了)
AOLツールバー(AOL
BIGLOBEツールバー(ビッグローブ、2016年3月24日サービス終了)
Bingツールバー(Microsoft)
gooスティック(NTTレゾナント2016年3月22日サービス終了)
livedoorツールバー(ライブドア、2011年9月30日サービス終了)
NAVERツールバー(ネイバージャパン、2013年4月10日サービス終了)
OCNツールバー(NTTコミュニケーションズ2016年3月22日サービス終了)

脚注



注釈


出典


関連項目



リボン (GUI)
タスクバー#ツールバー

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。