テルシオ

テルシオ（Tercio）

テルシオは、1534年から1704年までの間にスペイン王国が採用した軍事編成です。この名称は、最初の編成が確立された1509年ごろから使われ、1536年には公式に認められました。テルシオは、基本的に志願兵による常備軍としての性質を持ち、従来の軍隊よりも高い訓練と団結力を要しました。

歴史的背景

スペイン王国はレコンキスタを経てイベリア半島の主要地域を支配下とし、他国と地位を争う強国へと成長しました。1494年、フランスのイタリア侵攻がきっかけとなり、イタリア戦争が勃発します。スペイン軍は、ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバの指揮のもと、イタリア戦争に介入しますが、戦局は当初思ったよりも厳しく、特にフランス軍に対しては敗北を重ねました。

この困難な状況から改革が求められるようになり、Alonso de Quintanillaらにより編成が見直され、コロネリアが誕生しました。その後、同様の改革が行われ、最終的にテルシオという新たな編成が整えられました。

テルシオの特性

テルシオは1000名前後の兵士から成り、指揮官にはコロネル（大佐）という階級が与えられました。兵士たちはパイクと呼ばれる槍を主に使用し、銃兵も配置されました。この新しい編成は、1536年に公式に認められ、火器を効果的に活用しながら進化していきました。

テルシオは防御を重視した隊形が特徴であり、戦闘時には槍兵が中心となった大規模な編成を組み、周囲を銃兵が囲む形が取られました。この方式は「Cuadro de Terreno」と呼ばれ、他国からもその名が知られるようになりました。テルシオの戦術は防御的であったため、一度隊形が作成されると、攻撃には移りづらく、移動も遅れるという課題がありました。しかし、これを補うために砲火を用いるなどの工夫がされました。

栄光の時代と衰退

テルシオは16世紀を通して最精鋭の軍団として活躍し、1525年にはフランス王フランソワ1世を捕虜にするなどの成功を収めましたが、17世紀に入ると新しい軍事編成に挑まれることになります。特にネーデルラントのマウリッツ・ファン・ナッサウによるオランダ式大隊は、テルシオが持つ欠陥を突く形で進化し、スウェーデンのグスタフ2世アドルフの改革によってさらに進化します。これにより、テルシオはその存在意義を徐々に失っていき、1635年の改編を経ても新しい形としての必要性が問われることになります。

フランスとの戦闘で1393年のロクロワの戦いでテルシオの優位が崩れると、ヨーロッパ各国がテルシオ型の編成を模倣し、様々な形で発展を遂げていきました。最終的には1704年にフェリペ5世が新しい編成を採用したことで、テルシオは姿を消す運命に至ります。このように、テルシオはその歴史において重要な役割を果たしましたが、時代と環境の変化に対応しきれず、軍隊の世界から消えていったのです。

まとめ

テルシオは戦術的には革新的な軍事編成であり、歴史的な背景においてもスペインの軍事力を象徴する存在でした。時代とともに変化する戦闘の様相に対し、彼らの存在は重要でしたが、最終的には新たな軍事編成への移行を余儀なくされました。その痕跡は現代においても一部の軍隊用語として残っています。このような彼らの遺産は、戦争の歴史を考える上で欠かせないものとなっています。

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