ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ

ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ：卓越したスペインの将軍

ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ（1453年9月1日 - 1515年12月2日）は、スペイン王国の将軍であり、「エル・グラン・カピタン（偉大な将軍）」と尊称されています。彼は、その軍事的な才能と戦術革新によって、15世紀末から16世紀初頭のヨーロッパの軍事史に大きな影響を与えました。また、一部の歴史家は、1503年のチェリニョーラの戦いにおける火力と塹壕の組み合わせを評価し、彼を塹壕戦の父と見なしています。

生涯

誕生から成人まで

1453年、ゴンサロはコルドバ近郊の町モンティーリャで生まれました。父はアギラール伯爵ドン・ペドロ・フェルナンデス・デ・コルドバ、母はエルヴィラ・デ・エレーラです。彼は次男であり、兄ドン・アロンソがいました。家系はカスティーリャ王国の提督を輩出するエンリケス家に属していました。

ゴンサロが幼い頃に父が亡くなり、アギラール伯家はカブラ伯家との対立に直面しました。カブラ伯家は兄弟が幼いことを理由に追い落としを狙いましたが、アギラール伯家の家臣たちは兄弟を守りました。次男であるゴンサロの立場は特に厳しかったものの、兄の尽力によって支えられました。一時教会に入りましたが、成人後に還俗し、宮廷に出仕しました。

内戦とレコンキスタ

当初、ゴンサロは王弟ドン・アルフォンソに仕え、彼の死後はイサベル1世に仕えました。1474年、イサベル1世がカスティーリャ女王に即位すると、ポルトガル王アフォンソ5世が妻フアナの継承権を主張して侵攻を開始し、内戦が勃発しました。この戦争で、ゴンサロはサンティアゴ騎士団長アロンソ・デ・カルデナスの指揮下で戦いました。アルベラの戦いの後、アロンソ・デ・カルデナスはゴンサロの勇敢さを称賛し、褒美を与えました。

ゴンサロは、早くもこの頃から優れた軍事的才能を発揮し始めました。彼は一介の士官でありながら、将軍のように鋭敏な知性と広い視野を持ち、また非常に忍耐強く、大胆不敵な行動で周囲を驚かせました。その評判はすぐに広まり、兵士たちからの尊敬を集めました。

1482年、カスティーリャはイベリア半島最後のイスラム国家グラナダ王国への侵攻を開始しました。この戦争で、ゴンサロはサンティアゴ騎士団長となっていた兄ドン・アロンソの指揮下に入りました。ゴンサロは、上官である兄と積極的に意見を交わすことができ、その関係は彼にとって大きな意味を持ちました。戦いは都市を巡る攻防戦とグラナダ軍の奇襲が繰り返され、両軍ともに工兵とゲリラを盛んに活用しました。

ゴンサロの功績としてよく知られているのが、イリョラにおけるイサベル1世の護衛です。イサベル1世がグラナダの戦況を視察するためイリョラへ向かった際、ゴンサロは彼女を護衛し、グラナダ側の攻撃を撃退しました。この功績により、イサベルはゴンサロを高く評価するようになったと言われています。1492年、約10年に及ぶ戦いの末、グラナダはカスティーリャに降伏し、レコンキスタは完了しました。ゴンサロは開城の際にグラナダ側との協定を結ぶ使者の一人となり、戦後、多くの領地を与えられました。

第一次イタリア戦争

当時、ゴンサロは優秀な士官として評価されていましたが、イサベル1世は彼の忠誠心と能力を高く評価していました。1494年に始まったイタリア戦争で、スペイン軍の司令官としてゴンサロが選ばれたのは、イサベルの個人的な評価によるものでした。

イタリアに上陸したゴンサロは、ナポリ王に5千の援軍を送りました。1495年3月31日、教皇アレクサンデル6世の呼びかけによって神聖同盟が結成され、戦況はフランスの劣勢に転じ始めました。

1495年5月26日、ゴンサロ率いるスペイン・ナポリ連合軍は、カラブリアのセミナラでフランス軍と交戦しました（セミナラの戦い）。連合軍は兵力で優勢でしたが、フランス軍の騎兵突撃でスペイン騎兵が敗退し、続いてスイス槍兵の攻撃により連合軍は壊滅しました。この敗北はゴンサロにとって生涯唯一の敗北となりました。

しかし、ゴンサロはこの敗戦から学び、スペイン軍の編成を変革する必要性を痛感しました。1495年7月6日、フォルノヴォの戦いで神聖同盟軍に敗れたフランス軍は、イタリアから撤退しました。ゴンサロはイタリアに残り、軍隊の改革を開始しました。

コロネリア

セミナラの戦い当時のスペイン軍は、歩兵が剣と丸盾を装備し、投射兵器はクロスボウが主力でした。重装騎兵の数は少なく、軽装騎兵が中心でした。砲兵、工兵は数も多く質も高かったものの、レコンキスタでの攻城戦やゲリラ戦には適していましたが、平野での野戦には不向きでした。

対照的にフランス軍は、歩兵の主力は槍兵であり、特にスイス人傭兵は精鋭として恐れられていました。重装騎兵はフランス軍の中核であり、機動力と衝撃力を兼ね備えていました。ゴンサロは、スペイン軍の弱点を克服するために、歩兵の装備を剣から槍に変更し、密集隊形を組ませることにしました。また、部隊の柔軟性を高めるため、士官の数を増加させました。こうして編成された部隊はコロネリアと呼ばれ、後のテルシオへと発展しました。さらにゴンサロは、塹壕や土塁を利用して騎兵の突撃を阻止する戦術を導入しました。

第二次イタリア戦争

ゴンサロの新しい軍隊の実力を試す最初の機会は、オスマン帝国との戦いでした。ゴンサロはナポリ王フェデリーコ4世と共にギリシャに遠征し、ケファロニアを奪取しました。1498年にスペインに帰国したゴンサロは、エル・グラン・カピタンの称号を与えられ、サンタンジェロ公爵に叙せられました。

1499年、フランス軍は再びイタリアに侵攻し、第二次イタリア戦争が始まりました。ゴンサロは1501年にスペイン軍司令官として再びイタリアに上陸し、バルレッタを拠点にゲリラ戦を展開しました。補給が苦しくなったフランス軍が部隊を分散させた隙に、ゴンサロはフランス軍の補給拠点チェリニョーラを急襲し、野戦陣地を構築しました。1503年4月21日、チェリニョーラの戦いが勃発しました。

チェリニョーラの戦い

ゴンサロは丘の上に陣取り、周囲を塹壕と土塁で補強していました。スペイン軍は騎兵1600名、歩兵6000名、アルケブスを装備したドイツ人傭兵500名、大砲13門で構成されていました。対するフランス軍は騎兵650名、歩兵7000名、大砲26門でした。フランス軍は偵察が不十分で、塹壕の存在に気づいていませんでした。

最初にフランス騎兵が突撃しましたが、塹壕で停止し、ドイツ傭兵の火力によって混乱しました。続いてスイス槍兵が塹壕を突破しようとしましたが、撃退されました。あまりの損害の大きさにフランス軍は撤退を開始し、ゴンサロは追撃を命じました。フランス軍の司令官ルイ・ダルマニャックは戦死し、多くの兵士が命を落としました。この戦いでのフランス軍の損害は3000名を超え、スペイン軍の損害は100名程度でした。

チェリニョーラの戦いは決定的な勝利であり、フランス軍はナポリから追い出されました。ゴンサロは1504年までにナポリ全土を制圧し、フランス軍はイタリアから撤退しました。この戦いは、火力を効果的に使用して重装騎兵を破った最初の事例であり、軍事史的に非常に重要な戦いとされています。

解任

ゴンサロは1507年までナポリの総督を務めましたが、その功績が大きすぎたため、フェルナンド2世の嫉妬と疑心を招きました。1504年のイサベル1世の死は、ゴンサロにとって頼れる後見人を失ったことを意味しました。フェルナンド2世は、ゴンサロの公費管理のずさんさを理由に彼を解任し、その後は役職を与えませんでした。1515年、ゴンサロはスペインのロハで死去しました。

評価

ゴンサロは、その生涯で一度しか敗北を喫しておらず、敗北から学んで次の戦いに活かすことができた、当時最高の将軍の一人でした。チェリニョーラの戦いは、野戦築城と火力を効果的に使用し、重装騎兵を撃破した画期的な戦いでした。しかし、ゴンサロを火力戦の先駆者と見なすのは正確ではありません。彼は、砲兵の斉射を重視し、銃兵に期待していたわけではありません。彼が重視したのは、野戦築城によって敵を攻城戦に引き込むことであり、それはレコンキスタで攻城戦の経験を積んだスペイン軍にとって最適な戦術でした。

チェリニョーラ以降、スペイン軍における銃兵の割合は増加しましたが、それはフランス軍も同様でした。戦術面でも野戦築城が一般的となり、16世紀の戦場では両軍が塹壕を挟んでにらみ合う光景がしばしば見られるようになりました。しかし、ゴンサロの軍事改革は、その後のヨーロッパの軍事史に大きな影響を与えました。コロネリアはテルシオへと発展し、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパで最も恐れられる部隊となりました。また、士官数を増加させることで部隊の柔軟性を高めたことも重要であり、各国で士官学校が設立されるようになりました。ゴンサロは、16世紀スペインの繁栄の種を蒔いたと言えるでしょう。

PRIMERA BATALLA DE SEMINARA - HISTORIA MILITAR DE ESPAÑA
BATALLA DE CERIÑOLA - HISTORIA MILITAR DE ESPAÑA

もう一度検索