テーザー銃

テーザー銃：低致死性兵器の光と影

テーザー銃は、アメリカのアクソン社（旧テーザー・インターナショナル）が製造する、電撃を用いて対象者を制圧する武器です。警察や軍隊などで広く採用されていますが、その安全性や倫理的な問題をめぐって、長年にわたる議論が続いています。本稿では、テーザー銃の仕組み、歴史、使用上の問題点、そして社会的な議論について詳細に解説します。

テーザー銃の仕組み

テーザー銃は、トリガーを引くと圧縮窒素ガスを用いて、棘状の電極を備えた2本の発射体を発射します。発射体の速度は秒速約55メートルにも達し、最大射程は警察向け製品で約10メートル、一般向け製品で約4.5メートルです。発射体と本体は絶縁された銅線で接続されており、電流を流して対象者の筋肉を麻痺させ、制圧します。

効果は、局所的な激痛と筋肉麻痺ですが、死亡事故も報告されており、非致死性兵器ではなく低致死性兵器と分類されています。電極は衣服を貫通する設計になっており、容易には抜けないようになっています。

テーザー銃の歴史

テーザー銃の開発は1969年にアメリカ航空宇宙局の研究者、ジャック・カヴァーによって開始されました。彼は1974年に完成させたこの武器を、少年時代のヒーローであるトム・スウィフトの小説『トーマス・A・スウィフトの電磁ライフル』にちなんで「TASER」と名付けました。当初は火薬を使用していましたが、後に非火器と認定されるモデルが開発されました。1993年、リック・スミスとトーマス・スミスの兄弟がテーザー社を設立し、製品の改良と普及を進めました。その後、アクソン社へと社名変更し、ボディカメラなどの製品も展開するようになりました。

テーザー銃のモデル

アクソン社は、現在も複数のテーザー銃モデルを製造・販売しています。代表的なモデルには、2発同時発射のTASER X2、単発式のTASER X26P、そして最新モデルのTASER 7などがあります。TASER 7は2発の発射体を回転させながら発射することで、命中精度と制圧効果を高めています。また、無線接続機能によりデータの記録や管理も容易になっています。

テーザー銃の致死性とリスク

テーザー銃は低致死性兵器ですが、死亡事故も報告されており、その使用には大きなリスクが伴います。特に、子ども、高齢者、心臓疾患を持つ人への使用は危険性が高まります。また、長時間や繰り返し使用することも危険です。製造元のアクソン社も、これらのリスクについて警告しています。テーザー銃の使用による死亡原因として、興奮せん妄が指摘されていますが、その診断基準や因果関係については議論が続いています。

ドライヴスタン機能と問題点

一部のテーザー銃には、発射体を使用せず直接対象者に押し当てて電撃を与える「ドライヴスタン」機能が搭載されています。これは痛みを与えることで抵抗を抑制する目的で使用されますが、過剰使用や乱用のリスクがあり、倫理的な問題が指摘されています。警察によるドライヴスタンの使用は、抵抗のない相手への痛みを与える行為として批判されており、拷問に該当する可能性も懸念されています。

テーザー銃と法執行機関

世界中の多くの法執行機関がテーザー銃を導入していますが、その使用をめぐっては倫理的な議論が続いています。テーザー銃の使用によって警察官や容疑者の負傷率が減少したとする報告もありますが、一方で、過剰使用や誤用による事故も発生しています。警察官のテーザー銃への過剰依存も問題視されており、適切な訓練と運用が求められています。

結論

テーザー銃は、犯罪者の制圧に有効なツールとなりうる一方で、致死性や倫理的な問題を内包する複雑な兵器です。その使用にあたっては、適切な訓練、厳格な運用基準、そして継続的な議論が不可欠です。 将来、より安全で倫理的な代替手段が開発されることが期待されます。

もう一度検索