ディンゴ

ディンゴとは

ディンゴ（学名：Canis lupus dingo、または英語でdingo）は、オーストラリア大陸およびその周辺地域に生息している野生の犬の亜種です。広義では野犬の一種に分類されており、オーストラリアの生態系において重要な役割を果たしています。

生息域の起源と進化

ディンゴの起源は、オーストロネシア人によってオーストラリアに持ち込まれたイヌに遡ると考えられています。この動物がオーストラリアに到達したのは、最終氷期の終了後、数千年前であると言われています。最終氷期の終わりに、タスマニア島は海面上昇によりオーストラリア本土から切り離され、それ以降、ディンゴはオーストラリア大陸の環境に適応していきました。しかし、ここで野生化する過程において、すでにオーストラリアに住んでいたアボリジニと共生することになります。彼らはディンゴを家畜として飼い始めましたが、次第にディンゴは野生に帰っていきました。

現在、ディンゴは他の犬種との交雑が進んでおり、純血の個体は少なくなっています。その中でも、フレーザー島に生息するディンゴは特に純血とされ、30の群れが存在し、一つの群れには多くて12匹の成体が見られます。

呼称と学名

ディンゴの学名は歴史的に数回変遷しています。最初に定義された学名は1792年のCanis antarcticusですが、その後Canis familiaris dingoという名前が使われるようになり、現在ではCanis lupus dingoとして分類されています。このように、ディンゴはタイリクオオカミに属する独自の亜種として位置づけられています。そのため、近年の分類学ではイエイヌとは別種とされています。

一般名として「ディンゴ」という言葉は、ニューサウスウェールズ州に住むアボリジニの族がその犬に用いていた「tingo」に由来しているとされます。地理的な観点からも、オーストラリアのディンゴは多様な呼称が与えられており、地域によって異なる名称が使われることがあります。たとえば、「高山ディンゴ」や「砂漠ディンゴ」など、その生息地の特徴を反映した呼び方がなされています。

生物的特徴と生態

ディンゴは体長約103センチメートル、典型的には黄褐色の毛皮を持ち、垂直に立った耳が特徴的です。中型から大型犬に分類され、性質は狩猟本能が強く、獰猛です。彼らはオーストラリアの多様な環境、特に砂漠や草原、温帯林の周辺で生活し、繁殖期には群れを形成して共同生活します。ディンゴはイエイヌとは異なり、吠え声が少なく、主に嗅覚と視覚を使って狩りを行います。

また、ディンゴは固有の生態的地位を持っており、かつてオーストラリアに生息していたフクロオオカミと競合し、環境適応の結果として生存競争に勝利しました。これにより、フクロオオカミは絶滅し、ディンゴが生き残りました。

人間との関わり

ディンゴは家畜に対する襲撃が頻繁に報告され、そのため駆除されることが多く、環境保護団体から批判が寄せられています。特にオーストラリア南東部には、ディンゴによる被害を防ぐために「ディンゴフェンス」と呼ばれる長大なフェンスが設置されています。また、近年では人間への襲撃もあり、過去10年間での被害報告も存在します。特に1980年には、ウルル近くで生後間もない女児がディンゴによって襲われたとされる事件があり、その後の調査でディンゴによる関与が確認されています。

フレーザー島では、その生息数の影響を受けた事件があり、特にパーク利用者との接触が続く中で、科学界からはディンゴの数に変化がないと指摘されています。これらの状況は、ディンゴが持つ生態的存在意義や、また人間との関係においての未来について、さまざまな議論を引き起こしています。

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