デネブ

デネブ (Deneb) について

デネブは、はくちょう座のα星であり、全星の中で最も明るい恒星の一つとされています。この星は、こと座のベガ、わし座のアルタイルと共に夏の大三角を形成し、夏の夜空で目立つ存在です。デネブは、西暦10000年頃には北極星になると考えられています。

特徴

デネブは、明るさが21等から1.29等の範囲で変わることから、はくちょう座α型変光星のプロトタイプとされています。ただし、肉眼での観測ではその明るさの変化を感じることは難しいです。デネブの質量は太陽の約15倍、半径は108倍、光度においては太陽の54,400倍以上と、恒星として非常に大きく明るい白色超巨星の一種です。

夏の大三角のメンバーであるベガやアルタイルは、それぞれ太陽の2倍から3倍の質量と半径を持ち、光度も数十倍に過ぎませんが、デネブは群を抜いてその特異性が際立っています。それだけでなく、目に見える明るさとしては、デネブのみが太陽系から非常に遠くに位置するため、他の二つの星と同じ明るさで目視できるのです。もしデネブがベガの位置にあった場合、目には金星の最大光度の約15倍という超高輝度で見えることになります。

その距離については、年周視差が小さく観測が難しいため、約1400光年と推定されています。1989年から1993年にかけて行われた欧州宇宙機関のヒッパルコス衛星による観測によってもこの距離は確認され、デネブは全天の一等星の中で最も遠い位置にある星とされています。デネブは最大級の光度を誇り、銀河系内の広い範囲 (約3万光年) にわたり肉眼で観察可能です。

この星が一日に放射するエネルギーは、太陽が140年かけて放出する量に相当します。また、デネブは年間で太陽質量の1000万分の8を失っており、これを換算すると約100万年後には太陽の質量を失うことになります。恒星進化の理論に基づけば、数千万年後には赤色超巨星に進化し、その結果として超新星爆発を起こすと見込まれています。

名称

デネブという名前は、バイエル符号でα Cygni（略称：α Cyg）としても知られています。この固有名はアラビア語の「ذنب الدجاجة（dhanab al-dajājah）」に由来し、意訳すれば「めんどりの尾」となります。デネブという名称は他の星座にも用いられていましたが、2016年に国際天文学連合によって、はくちょう座α星に対する正式な固有名として認定されました。なお、他の星との混同を避けるために、「デネブ・キュグニ」と呼ばれることもあります。

また、アラビア語に由来する「アリデッド（Arided）」という名称もあり、これは「乗り手の後ろに座っている者」という意味を持っています。中国では、この星を天津四（女宿の四番目の星）として知られています。

日本での呼称

日本においては、天の川の中に位置することから、特定地域で「天の川星」と呼ばれることがあります。また、七夕に関係して、遅れて現れることから「ふるたなばた」や「あとたなばた」と呼ばれることもあります。

デネブは、夏の星空においてその美しさと輝きを放つ重要な恒星として、多くの人々に親しまれています。

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