デマントイド

デマントイド（翠柘榴石）の概要

デマントイド、またの名を翠柘榴石は、柘榴石グループに属する灰鉄柘榴石（アンドラダイト）の緑色の変種です。この鉱物は、主にカルシウムと鉄を含む化学式Ca3Fe2(SiO4)3を有し、特にクロムによる置換がその鮮やかな緑色を生み出しています。一部の誤った呼称として、「オリビン」や「ウラリアンエメラルド」が存在しますが、これらは正確ではありません。

加熱処理の問題

近年、2003年頃には、一部のロシア産のデマントイドガーネットが、色を強化するために加熱処理されているとの報告がありました。こうした処理は一般的に低温で行われており、宝石学的な検査によっては容易には検出できないと考えられています。この問題は、デマントイドの市場に影響を与えている可能性があります。

デマントイドの発見と歴史

デマントイドが発見されたのは1868年、ロシアのウラル山脈でのことでした。具体的には、エカテリンブルクから約110キロメートルほど離れた地域で、鉱山労働者たちは高リフラクションを持つ珍しい宝石の存在に気づきました。その魅力的な輝きから、この鉱物は「ダイヤモンドのようなもの」を意味する古ドイツ語のDemantから名付けられました。

その後、エカテリンブルクの南方でも異なる鉱床が見つかり、デマントイドは急速に高価で貴重な宝石として市場での地位を確立しました。特に、ピーター・カール・ファベルジェがデマントイドを用いた美しい宝飾品を生み出したことから、ロシアにおけるデマントイドの人気は高まりましたが、共産主義時代に入ると流行が衰えました。

1970年代と1980年代には新たな原石が見つかり、1996年にはナミビアでもデマントイドの鉱床が発見されました。さらに、2009年にはマダガスカルでも新たなデマントイドが見つかり、デマントイドの供給源は多様化してきました。

デマントイドの外観

デマントイドは主に緑色を呈しますが、その色調は多岐にわたります。特に、強い黄色がかった緑色からエメラルドに似た深い緑色まで、色のバリエーションがあります。また、鉄の含有量により、茶色がかったものも存在します。デマントイドは分散度が非常に高く、虹色の輝き（ファイア）が目に見える特徴を持っていますが、一部の石では本体の緑色がこの効果を隠してしまうことがあります。

デマントイドは一般的に小さなサイズで、1カラット（200mg）以下のものが多く、2カラット（400mg）を超えるものは希少です。そのため、特に強い緑色を持つ石が高く評価されますが、色の濃淡による好みは人それぞれです。

特徴的なインクルージョン：ホーステール

ロシア産のデマントイドには、時折ホーステールと呼ばれる特有のインクルージョンが見られます。これはクリソタイルの繊維が放射状に広がるもので、金色の糸のような見た目が特徴です。このインクルージョンは特にロシア産のデマントイドで見られるため、宝石の価値を高める要因とされます。
ただし、他の産地でもホーステールを持つデマントイドが存在するため、すべてのロシア産デマントイドにこのインクルージョンが含まれるわけではありません。ホーステールが含まれることは、デマントイドにとって望ましい特性と見做されることもありますが、外見によって影響を受けることがあるため、その存在が常に価値を保証するわけではありません。

デマントイドはその独特な魅力から、多くのジュエリー愛好者に支持されており、その美しさは今なお多くの人々を魅了し続けています。

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