デール

デール：モンゴル民族の伝統衣装

デール（ᠳᠡᠪᠡᠯ、дээл、deel）は、モンゴル国および中国の内モンゴル自治区に住むモンゴル民族が着用する伝統的な民族衣装です。その歴史は古く、チャイナドレスのルーツの一つとも言われています。デールは、単なる衣服としてだけでなく、モンゴル民族の文化や生活様式を色濃く反映した重要な要素となっています。

デールの構造

デールは、基本的に立襟で左に打ち合わせがある、丈の長い上着です。素材は、絹やナイロンなどが用いられ、季節に応じて裏地の素材が変わります。夏用には薄い布の裏地が、冬用には子羊の毛皮の裏地が使われ、寒さの厳しいモンゴルの気候に適した構造になっています。

特に、春夏用の綿入れのデールは「テルレグ」（ᠲᠡᠷᠯᠢᠭ、тэрлэг）とも呼ばれています。デールは、部族、年齢、性別、既婚・未婚などの違いによって、細かいデザインや装飾が異なり、その種類は400種類を超えると言われています。

また、デールは衣服としてだけでなく、寝具や家畜の防寒具としても利用されることがあります。

デールの着方

デールを着用する際には、ゴタル（ᠭᠤᠲᠤᠯ、гутал）と呼ばれる、膝丈でつま先が反り返ったブーツを履くのが一般的です。男性の場合、正装時にはジャンジン・マルガエ（ᠵᠠᠩᠵᠤᠨᠮᠠᠯᠠᠭᠠᠢ、жанжин малгай）という、頭頂部が玉ねぎのように尖った帽子を被ります。女性は、トールツォグ（ᠲᠣᠭᠤᠷᠴᠤᠭ、тоорцог）という、長い飾り紐がついた丸い帽子を被ります。

男性のデールは、ゆったりと着こなすことが多く、色は無地で落ち着いた色合いが好まれます。中でも、青色のデールは特に格式が高いとされています。一方、女性のデールは、模様が入った鮮やかな色調のものが多く、ウエストを強調して着るのが特徴です。さらに、その上にフレム（ᠬᠦᠷᠮ᠎ᠡ、хүрэм）という袖付きの上着や、ハンターズ（ᠬᠠᠨᠲᠠᠭᠠᠵᠠ、хантааз）という袖なしの上着を重ね着することもあります。

既婚女性の場合、ブス（ᠪᠦᠰᠡ、бүс）という帯を締めないデールの上に、ウージ（ᠤᠤᠭᠤᠵᠤ、ууж）という袖なしの長い上着を着用することがあります。

近年では、都市部、特にウランバートルなどに住む女性の間では、ウムド（ᠥᠮᠦᠳᠦ、өмд）というズボンを省略したり、ゴタルの代わりにパンプスを履くなど、現代風のアレンジもみられます。

デールの丈を測る際には、メジャーなどは用いず、掌を使って長さを決めます。一般的に掌7つ分が目安とされています。

デールに込められた意味

デールは、そのデザインや色、素材によって、着用者の社会的な地位や年齢、性別、既婚・未婚などの情報を示す役割も果たしてきました。また、デールに施される刺繍や模様には、それぞれ意味があり、モンゴル民族の文化や歴史、自然への敬意などが込められています。

デールは、モンゴル民族にとって、単なる衣服以上の意味を持つ、非常に重要な文化遺産です。その美しさや機能性、そして文化的な背景を知ることで、モンゴル民族への理解を深めることができるでしょう。

関連事項

* モンゴル族

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