ナノグラフェン

ナノグラフェンとは

ナノグラフェンとは、ナノメートルサイズのグラフェンの総称であり、近年、その特異な特性から様々な研究が活発に行われているナノカーボン物質です。グラフェンとは、炭素原子が六角格子状に結合したシート状の物質で、そのサイズがナノスケールになったものがナノグラフェンと呼ばれます。

ナノグラフェンには、量子細線状の構造を持つグラフェンナノリボン（Graphene Nanoribbon）も含まれます。これは、ナノグラフェンリボンとも呼ばれ、その特異な構造と物性から、新たな電子デバイス材料としての応用が期待されています。

サイズ効果とエッジ効果

ナノグラフェンは、そのサイズがバルクのグラフェンシートと芳香族分子の中間に位置するため、強いサイズ効果とエッジ形状効果を示すことが期待されています。グラフェンの端には、アームチェア端とジグザグ端の2種類が存在し、特にジグザグ端は、その構造に起因する特有の電子状態（表面局在状態）をフェルミ準位近傍に形成し、磁気的な異常を引き起こす可能性があることが指摘されています。この現象は、1996年に藤田光孝らの研究グループによって初めて理論的に示されました。

ナノグラフェンとナノグラファイト

ナノグラフェンが層状に重なった物質は、厳密にはナノグラファイトと呼ぶべきですが、実際には層間距離がグラファイトに比べて大きいため、層状効果が弱まり、ナノグラファイトとナノグラフェンはほぼ同義語として扱われることが多いです。

研究の歴史

2003年にK.S.NovoselovとA.K.Geimらによってグラフェンの作製法が確立されて以降、グラフェンデバイスの微細化に伴い、ナノグラフェンに関する研究が急速に進展しました。2005年には、日本の研究グループが走査型トンネル顕微鏡（STM）や走査型トンネル分光法（STS）を用いて、ナノグラフェンのエッジ状態を直接観察することに成功しました。

さらに、2007年にはコロンビア大学のP.Kimらの研究グループが、半導体微細加工技術を用いてグラフェンナノリボンの実験的な作製に成功しました。これにより、ナノグラフェン、特にグラフェンナノリボンの電子デバイスへの応用研究が加速しました。

グラフェンナノリボン

グラフェンナノリボンは、リボン状のナノグラフェンであり、炭素系物質からなる新しい量子細線として期待されています。グラフェンは本来、単層のシート状物質を指しますが、初期の研究では、グラフェンを扱っているにもかかわらず、グラファイトと記述している場合が多く見られました。これは、当時の学術用語の浸透度によるものです。例えば、藤田らによるグラフェンナノリボンの初期の研究論文では、グラファイトリボンという名称が使われていました。しかし、2005年のグラフェン発見以降、このような用語の混乱はほとんど解消されています。

電気的特性

ナノグラフェン、特にグラフェンナノリボンは、その特異な構造から、従来の半導体材料とは異なる電気的特性を示すことが知られています。これらの特性は、電子デバイスや量子コンピュータなど、様々な分野への応用が期待されています。

参考文献

ナノグラフェンリボンおよびエッジ状態の原論文: "Peculiar Localized State at Zigzag Graphite Edge", M. Fujita, K. Wakabayashi, K. Nakada and K. Kusakabe, J. Phys. Soc. Jpn. Vol. 65 No. 7, July, 1996 pp. 1920-1923.

関連項目

グラフェン
藤田光孝
若林克法

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