ニホンハッカ

ニホンハッカ（日本薄荷）

ニホンハッカ（学名：Mentha canadensis var. piperascens）は、シソ科ハッカ属の多年草で、日本に自生するハーブの一種です。和ハッカ、ワシュハッカ（Japanese peppermint）とも呼ばれ、清涼感のある香りが特徴です。

特徴

名前の由来: ハッカは中国の漢名「薄荷」の音読みに由来。「薄」は密生する様子、「荷」は地下茎を持つことを意味します。
別名: メグサ、メザメグサ、メハリグサとも呼ばれ、目の疲れや眠気覚ましに用いられた歴史があります。
分布: アジア東部原産で、日本全国に分布。
形態: 草丈は20-60cmほど。湿った草地に自生し、茎は四角形、葉は長楕円形です。夏から秋にかけて、淡紫色または白色の唇形花を咲かせます。
成分: 全草、特に茎葉にメントールを主成分とするハッカ油を含み、ピネン、カンフェン、リモネンなども含まれます。これらの成分には、大脳皮質や延髄を興奮させる作用があり、発汗や血行促進効果が期待できます。

薬用としての利用

ニホンハッカは古くから、胃腸薬、鎮痛薬、香料として利用されてきました。

生薬: 秋に茎葉を刈り取って陰干しにしたものを「薄荷」、葉だけを「薄荷葉」と呼び、薬用や製薬原料、浴湯料などに利用します。
民間療法: 食欲不振、胃もたれ、腸内ガスの排出には、薄荷または薄荷葉をみじん切りにして熱湯を注ぎ、しばらく置いてから飲用します。また、イライラ、のぼせ、更年期障害にも良いとされます。
外用: 虫刺されのかゆみ止めや、頭痛、筋肉痛、肩こりの緩和に、生葉を揉んで汁を患部に塗布します。布袋に入れて風呂に入れると、肩こりや筋肉痛を和らげる効果も期待できます。

メントールの利用

ニホンハッカから抽出されるメントールは、食品、生活用品、タバコなどの香料として、また医薬品としても広く利用されています。

ハッカ脳: 水蒸気蒸留で得られた薄荷油を冷却再結晶させたもので、メントールを主成分とする複合結晶です。
食品分野: 菓子や飴などの香料として用いられます。
清涼感: メントールの爽快な香りや、冷感受容体を刺激する性質により、清涼感が得られます。

生産の歴史

かつて日本はハッカ生産で世界の大部分を占めていましたが、合成ハッカの普及や輸入自由化により、国内生産は衰退しました。

江戸時代: 越後国塩沢で薄荷油が採取されていました。
明治時代: 山形県から北海道へ栽培が広まり、北見地方が主産地となりました。
昭和時代: 北海道信用購買販売組合聯合会（現ホクレン）が取引に進出し、生産を安定させました。
現在: 一部の地域で栽培が続けられています。北見市には北見ハッカ記念館があり、ハッカの歴史を伝えています。

近縁種

セイヨウハッカ（ペパーミント）

ニホンハッカは、日本の風土に根ざした貴重な植物資源です。その香りと薬効は、現代でも私たちの生活に潤いを与えてくれます。

もう一度検索