リモネン

リモネンの概要

リモネン（Limonene）は、柑橘類に広く含まれるモノテルペンの一種であり、主に果皮から抽出されます。この物質は、化学式C10H16で示される無色透明の液体で、常温常圧で存在します。分子量は136.23で、リモネンはキラル化合物であり、d-リモネン（(+)-リモネン）とl-リモネンの二つのエナンチオマーがあります。d-リモネンは強いレモンの香りを持ち、ラセミ体はジペンテンとも呼ばれます。また、消防法で定められる危険物の規定にも該当しています。

物理的性質

最も多く存在するd-リモネンは、特に柑橘類の果皮に豊富に含まれ、香りの主要な成分です。この化合物は二重結合を2つ持ちますが、これにより化学的にはやや不安定で酸化されやすい性質があります。l-リモネンは一般的にハッカ油に含まれ、ラセミ体はテレビン油などに見られます。いずれのエナンチオマーも香料としての用途があります。

利用

リモネンはゴムやプラスチックなどの炭化水素系物質を溶かす特性を持っており、この性質を生かして有機溶剤としての用途が拡大しています。かつては洗剤における汚れ落とし成分として頻繁に使われていましたが、近年ではその単体やスチレン樹脂を混合した製品が登場しています。これにより、プラスチックモデル用接着剤やシールをはがすためのスプレーなどが開発されています。

柑橘系の芳香があるため、リモネンは香料としても広く利用されています。特にd-リモネンは、発泡スチロールの安全な溶剤としての特徴が注目されています。これにより、業界内での需要が高まる一因となっています。

安全性

d-リモネンは一部の研究で雄ラットに対する発癌性が報告されていますが、これは特定の条件下でのみ確認された現象であり、他の生物種においては同様の影響がないと考えられています。空気酸化によって生じたd-リモネンには感作性もあることが報告されていますが、一般的にリモネン自体は感作性や刺激性を除けば、毒性が低い物質であると評価されています。これにより、リモネンを使用した製品は安全性が高いとされています。

モノテルペンの分類

リモネンは、モノテルペンの代表的な例であり、特にd体とl体の2つの主要なエナンチオマーがあります。また、ラセミ体はジペンテンと同じ物質ですが、それぞれは異なる用途や性質を持っています。d体の系統名は(R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン、l体は(S)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセンとして知られています。

関連物質

リモネンに関連する他の物質として、テルピネン、フェランドレン、テルピノレン、シメン、メントール、チモール、カルバクロールなどが存在します。これらの物質もまた香料や化学工業で幅広く利用されています。


リモネンはその独特の香りと特性から多くの用途に使われており、今後も新たな利用法が期待されています。

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