ハチクマ

ハチクマ：ハチを狩る猛禽類の生態と渡り

ハチクマ（学名：Pernis ptilorhynchus）は、タカ目タカ科に属する中型の猛禽類です。その名前は、クマタカに似た姿で、ハチを主食とすることに由来しています。ユーラシア大陸東部の温帯から亜寒帯地域に広く分布し、日本では夏鳥として渡来して繁殖します。

分布と渡り

ロシアのバイカル湖周辺から極東、サハリン、中国東北部、インド、東南アジアなどに広く分布し、繁殖地は地域によって異なります。日本では九州以北で繁殖し、冬季は東南アジアへ渡って越冬します。日本の個体は、サシバのように沖縄・南西諸島を経由するのではなく、九州から五島列島を経て大陸に渡り、そこから南下するルートをとることが知られています。鹿児島県下甑島も重要な通過地点となっており、渡りの経路は西方向が中心ですが、北や南への移動も観察されています。春の渡りは、秋とは異なる経路で、大陸を北上した後、朝鮮半島から南下するようです。

形態

全長は57～61cmで、メスの方がやや大きくなります。他の猛禽類に比べて羽が短く、体色は個体によって大きなバリエーションがあり、識別が可能なほどです。一般的には、上面は暗褐色、下面は淡色か褐色をしています。オスは風切羽の先端と尾羽に2本の黒い帯があり、瞳は黒色です。メスは尾羽の黒い帯が細く、瞳は黄色です。足は同サイズの猛禽類よりも大きく、これはハチの巣を掘り起こすのに適した形態であると考えられています。

亜種

ハチクマは6亜種に分類されます。ユーラシア大陸西部に分布するヨーロッパハチクマ(Pernis apivorus)とは近縁種で、同一種とする見解もあるほど類似しています。

生態

ハチクマは丘陵地から山地の森林に単独またはつがいで生息します。日本では6月頃に繁殖し、樹上に木の枝を束ね、松葉を敷いたお椀状の巣を作ります。1～3個（通常2個）の卵を産み、主にメスが28～35日間抱卵します。雛は約35～45日で巣立ち、その後30～60日で親から独立します。冬には東南アジアへ渡り越冬しますが、毎年同じ場所に帰ってきて繁殖します。そのため、巣は年々大きくなり、下部は排泄物で富栄養化し、アカマダラコガネなどの昆虫の幼虫が生息する場所となります。

食性

ハチクマは肉食性で、夏から冬にかけてはスズメバチなどの社会性ハチの幼虫や蛹を主な餌とします。地中に営巣するハチも、巣の上から足で掘り起こして捕食する能力を持っています。時には養蜂場のハチの巣を襲うこともあります。秋から冬にかけては、ハチ類以外の昆虫、小鳥、カエル、ヘビなども捕食します。他の猛禽類とは異なり、集団で狩りをすることがあり、餌をめぐる争いはほとんど見られません。

ハチの攻撃を受けても、ハチクマは捕食を続け、刺されることは少ないようです。これは、頭部に硬い羽と厚い羽毛が生えていること、ハチ毒に対する耐性を持つことなどが考えられています。また、ハチクマに攻撃されたハチは反撃しなくなることがありますが、その理由はまだ解明されていません。フェロモン説や、集団攻撃による防衛放棄説などが提唱されています。しかし、幼鳥などはハチの攻撃を受けてしまうこともあります。

保全状況

IUCNレッドリストでは軽度懸念（LEAST CONCERN）、日本の環境省レッドリストでは準絶滅危惧種（NT）に指定されています。

参考文献

記載されている参考文献については、本文中に記述されている情報に基づいて、正確性を確認する必要があります。

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