ハルウララ

ハルウララ：113戦全敗の競走馬が巻き起こした奇跡の物語

1996年2月27日、北海道で誕生した競走馬、ハルウララ。その名は、NHK連続テレビ小説『天うらら』の主人公に由来します。小柄で臆病な性格だった彼女は、競走馬としてデビューした高知競馬場で、類まれな記録を打ち立てました。それは、113戦全敗という、前代未聞の連敗記録です。

生まれたときから弱かった？

ハルウララは、セリ市で買い手がつかず、生産牧場である信田牧場が自ら所有することになりました。高知競馬場の調教師、宗石大は、信田牧場場長の信田信義氏との縁から、ハルウララを引き受けます。入厩当初は、扱いにくい性格で苦労しました。鞍を装着しようものなら暴れ、腹帯を締めるにも地面にひっくり返るなど、手のかかる馬だったのです。

しかし、厩務員となった藤原健祐は、根気強く接することで、ハルウララとの信頼関係を築いていきました。藤原にだけは心を開き、次第に落ち着いていくハルウララ。この関係性が、彼女の長く続く競走生活を支える重要な要素となりました。

87連敗から始まった全国的な知名度

1998年11月17日、高知競馬でデビューしたハルウララは、5頭立ての5着。デビュー戦から勝利の女神には見放され、連敗街道を突き進みます。2003年5月には87連敗を記録。それでも、年間20回ほどの出走を続け、1回につき6万円の手当を得ていました。年間120万円の出走手当は、年間130～140万円の預託料とほぼ同額。高知競馬場の安価な預託料も、ハルウララが長く現役を続けられた要因の一つです。

蹄の疾患で出走を一度取りやめた以外はコンスタントに出走し、その健気な姿が注目を集め始めました。

ハルウララブームの到来

2003年夏、ハルウララの連敗記録がメディアに取り上げられ、全国的なブームが巻き起こります。高知競馬場の実況アナウンサー、橋口浩二が最初にその可能性に着目。高知新聞の石井研記者も取材を始め、記事が掲載されたことがきっかけで、全国紙やテレビ番組で大きく取り上げられました。

「リストラ時代の対抗馬」「負け組の星」というキャッチコピーとともに、ハルウララは多くの人々の共感を呼びました。単勝馬券は、「リストラ防止」「交通安全のお守り」として、珍しくも人気を博したのです。

このブームは、財政難に苦しんでいた高知競馬場にとって、大きな救世主となりました。

100連敗、そして武豊騎手との奇跡の競演

2003年12月14日、ハルウララは100連敗を達成。当日は4年ぶりの観客動員数5000人を超える盛況ぶりでした。

翌2004年3月22日には、中央競馬のトップ騎手、武豊が騎乗。これは、地方競馬を支援したいという武豊の思いから実現したものでした。入場者数、馬券売上額はともに高知競馬場史上最高を記録。武豊騎手は、勝たせることはできませんでしたが、ウイニングランを行い、ハルウララを「名馬」と称賛しました。

連敗記録の真実は？そして引退へ

5月23日、ハルウララは109連敗を記録、日本歴代2位と報道されましたが、実際にはそれ以上の連敗記録を持つ馬は他にも存在しました。この記録は、あくまで「ハルウララ」という存在の大きさを示すものと言えるでしょう。

8月3日、ハルウララの半妹、半弟との対決が実現。このレースを最後に、2005年3月での引退が発表されます。しかし、ハルウララはその後、新たな馬主のもとへ移籍。高知競馬場に戻ることはありませんでした。

ハルウララ、そしてその後

2006年10月、競走馬登録を抹消。その後も、繁殖牝馬としての計画などが持ち上がりましたが、実現せず、生死さえ不明な時期もありました。

2012年12月頃(または2013年4月頃)からは千葉県で余生を過ごし、2018年には交通安全啓発ポスターにも起用されるなど、様々な形で人々に愛され続けました。

ハルウララの物語は、単なる競走馬の生涯を超え、人々の心を揺さぶる感動的な物語となりました。その113戦全敗という記録は、彼女が決して諦めずに走り続けた証であり、多くの人々に勇気を与え続けた証でもあるのです。

もう一度検索