バゲット

フランスパンの代表格、バゲット：その歴史、種類、そして文化

フランスを代表するパンといえば、バゲットを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。小麦粉、塩、水、イーストというシンプルな材料のみで焼き上げられるバゲットは、フランスの伝統的なパンである「パン・トラディショネル」の一種です。 パン・トラディショネルとは、これらの基本的な材料だけで作られるパンの総称で、バゲットのように棒状のものを指します。棒状にすることで表面積が増え、焼き上げた際に香ばしくパリッとした皮の食感が生まれます。一方、パンの中身であるクラムを楽しむパンには、イギリス由来のパン・ド・ミーがありますが、こちらは砂糖を使用するなど、伝統的な製法とは異なります。

バゲット：フランスの伝統と技の結晶

フランス語で「細い棒」や「杖」を意味するバゲットは、その名の通り細長く、一般的なものは約350グラム、65センチメートルの大きさです。フランスの食文化を象徴する存在であり、首都パリでは毎年5月、パリ最優秀バゲットコンクールが開催され、優勝者は一年間エリゼ宮殿（フランス大統領官邸）にパンを納める栄誉に浴します。

その高い評価は、単なるパンを超えた存在感を示しています。2018年には、フランスのパン屋とペイストリー製造の全国連合が、バゲットのユネスコ無形文化遺産登録を希望する声明を発表。そして2022年には「手工芸技術とバゲットの文化」として、ユネスコ無形文化遺産に正式登録されました。これは、バゲットが単なる食べ物ではなく、フランスの伝統や文化、職人技を象徴する存在であることを意味します。

バゲット以外のフランスパン：多様な形状と味わい

バゲット以外にも、パン・トラディショネルには様々な種類があります。例えば、パリジャンはバゲットより太く、約650グラム、75センチメートルと大ぶりで、クープ（パンの切れ込み）は5本が一般的です。かつてパリで主流でしたが、現在はバゲットにその座を譲っています。また、ハムとバターを挟んだジャンボン・ブールというサンドイッチも、パリジャンと呼ばれることがあります。

ドゥ・リーヴルは「2リーブル（約1キログラム）」を意味し、その名の通り重量が特徴です。バタールは「中間」を意味し、バゲットとドゥ・リーヴルの間の太さで、約350グラム、40センチメートルと、バゲットより太く短いのが特徴です。そのため、クラムが多く、もちもちとした食感を楽しめます。日本でも人気が高く、バゲットと混同されることも多いようです。フルートは管楽器のフルートを思わせる形状で、フィセルは「紐」を意味する細長いパンです。

バゲットの未来：伝統と革新の共存

このように、フランスには様々な種類のパン・トラディショネルが存在し、それぞれが独自の形状、食感、味を持っています。バゲットがユネスコ無形文化遺産に登録されたことは、フランスの食文化を次世代へ継承していく上で大きな意味を持ちます。同時に、伝統を守りながら、新しい技術や発想を取り入れて進化を続けるフランスのパン職人たちの努力も、忘れてはならないでしょう。今後も、バゲットをはじめとするフランスパンの進化と、その魅力が世界中に広がっていくことを期待したいものです。

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