バフォメット

バフォメットの起源と影響

バフォメット（英：Baphomet）は、歴史的にはテンプル騎士団との関連が指摘される神秘的な存在です。もともと彼は、テンプル騎士団が崇拝しているとされる偶像として知られ、1307年の異端審問で言及されました。この名称は、1195年頃の吟遊詩人の作品にも登場し、特に第1回十字軍の記録者による説明では、バフォメットがムハンマドを指す言葉として使用されたこともあります。近代に入ると、バフォメットは西洋オカルトや神秘主義のシンボルへと昇華されました。

バフォメットの二元的シンボリズム

バフォメットは、エリファス・レヴィによって描かれた19世紀のイメージによって広く認識されています。レヴィの「メンデスのバフォメット」は、善悪、男女人間の対立を象徴する存在であり、調和や均衡を意味するものとされています。彼の描くバフォメットは両性具有で、善と悪の両面を併せ持つ姿として描かれています。これは、バフォメットが見た目に流されることなく、物事の本質を見極めるべき存在であることを示唆しています。

テンプル騎士団と異端審問

1307年、フランス王フィリップ4世によってテンプル騎士団のメンバーが逮捕され、拷問によって自白が強要されました。この際に、バフォメットの名が悪魔的な偶像として疑われたことは、騎士団が神秘的な信仰に傾倒していたことの証左とされています。しかし、これらの告発の多くは疑わしいものであり、カタリ派などの敵対者が行った捏造に基づくものだとも考えられています。

バフォメットのイメージとその変遷

バフォメットは、捏造された自白の中で様々に描かれる存在でした。その姿は、生首や猫、三つの顔を持つ頭など多岐にわたりました。近代において、彼はオカルトやサタニズムのシンボルとして名を馳せるようになり、特にレヴィの絵がその象徴的な存在感を強めました。

また、彼は異教の神々や悪魔と同一視されることもあり、キリスト教徒の間では異端視されました。中世の人々は、イスラム教徒が偶像崇拝を行っていると考え、バフォメットをその象徴として利用していました。このため、バフォメットの名は、宗教的な対立や誤解の象徴とも言えます。

形態とシンボリズム

バフォメットの姿は、黒山羊の頭と黒い翼を持つ形としてよく知られています。このイメージは、魔女たちの崇拝対象となり、特にレヴィの描いたものがその代表例です。また、彼の腕には「Solve」と「Coagula」という言葉が刻まれており、これは中世の錬金術の概念に基づいています。これらは、分解と統合、あるいは知識の探求といった深い意味を持ち、バフォメットが持つ普遍的な知恵を暗示しています。

現代におけるバフォメットの位置付け

19世紀以降、バフォメットはオカルト的な文脈の中で新しい意味を持つようになりました。多くのオカルト主義的な教えや実践において、彼の存在は精神的な探求や変革の象徴とされています。また、タロットカードなどにもその影響がみられ、悪魔として描かれることが多くなりました。バフォメットは単なる偶像ではなく、文化や宗教の歴史を反映した多面的な存在として、今もなお関心を集め続けています。

もう一度検索