ヒストリエ

ヒストリエ（HISTORIĒ）

概要

『ヒストリエ』は、作者の岩明均が長年構想を練り上げた、古代ギリシャを舞台にした歴史漫画です。この作品は『月刊アフタヌーン』にて2003年3月から連載が始まり、2010年には第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で大賞、2012年には第16回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しました。現代に生きる私たちにとって、歴史を追体験し、インスパイアを受ける貴重な作品として多くの読者に親しまれています。

物語の舞台

物語は紀元前4世紀の古代ギリシャ、特にマケドニア王国に焦点を当てています。主人公エウメネスは真実の歴史に名を刻む書記官で、アレクサンドロス大王に仕えることになります。エウメネスはアッリアノスの歴史書にも名を残した実在の人物であり、作品が展開する中で彼の波乱万丈の人生が描かれていきます。

エウメネスの人生

ストーリーはエウメネスの少年時代から始まり、彼がカルディアという都市国家でどのように育ち、成長していくかが描かれます。最初は有力者ヒエロニュモスの次男として恵まれた環境に育ち、高い知性を持つ少年として描かれますが、エウメネスの人生は一瞬にして変わります。スキタイ人奴隷の反乱をきっかけに、彼は奴隷身分に墜ち、波乱の旅を余儀なくされます。

彼は一度カルディアを去るものの、後に自由を手に入れ、戻ることになります。ここで彼が再会するのは、当初の家族や旧友たちでもあり、彼の成長や悲劇を背景にした人間関係の描写が、作品の深みを与えています。

成年期のエウメネス

後のストーリーでは、エウメネスはマケドニアに仕官することとなり、王フィリッポスに重用されながら、彼の書記官として活躍します。彼の活躍は次第に、王子アレクサンドロスとの関係を生んでいき、政治的、戦略的な局面でも重要な役割を果たします。エウメネスは戦争や政治の渦に飲み込まれつつも、単に傍観者としてではなく、自ら積極的に影響を及ぼす人物として描かれます。

特に、「マケドニア式将棋」という新たな娯楽を作り出し、それを通じてエウメネスがどのように王国に貢献していくかが描かれ、彼の知恵と戦略的思考もまた作品の中心的テーマの一つです。

人間関係と友情

エウメネスの物語は、彼の成長と共に、多様な人間関係によって彩られています。彼の周囲には、運命に翻弄される多くのキャラクターたちが登場しますが、友情や裏切り、愛憎といった重厚なテーマが織り交ぜられ、それぞれのキャラクターが持つ背景が物語の深みを増しています。

特にエウリュディケとの恋愛関係や、アレクサンドロスとの絆は、エウメネスが持つ人間性や、彼がどのようにして自らの運命を切り開いていくのかを描く重要な要素となっていきます。

休載と連載の今後

本作は受賞歴も多く、望まれる声が高まる中、長期の休載に入ることもありました。2022年には作者が休載を告知しつつ、物語の全体像を完結にまとめることに取り組んでいることが発表されました。現在も多くのファンに愛されているこの作品は、関連書籍や展覧会も展開されることが期待されています。

結論

『ヒストリエ』は、単なる歴史漫画を超え、深く練り込まれたストーリーに登場人物たちの感情、友情、裏切りが描かれる作品です。岩明均の描く生き生きとしたキャラクターたちの物語は、読む者を古代ギリシャの歴史へと誘う、魅力ある作品です。

もう一度検索