ヒートアップ

小説『ヒートアップ』のご紹介

中山七里の著作『ヒートアップ』は、現代の日本を舞台にした推理小説です。本作は、2011年から2012年にかけて幻冬舎の『ポンツーン』で連載された後、文庫化されました。物語は、著者の前作『魔女は甦る』から約2か月後の出来事を描いていますが、直接的な続編ではありません。前作の主要キャラクターである槙畑や毬村は登場せず、その後の彼らの運命についても明かされていません。

麻薬・ヒートの恐怖

物語は、過去に製造されていた麻薬・ヒートを巡る事件から始まります。ヒートはその名の通り、服用者の破壊的な衝動を引き出し、普通の人間を危険な兵器に変えてしまう影響力を持っていました。以前、ヒートを研究していた施設は壊滅に至りましたが、ヒートの取引が絶えない中、重要なキーパーソンとなる男、仙道寛人の行方は依然として不明でした。

捜査にあたる七尾究一郎を中心に、厚生労働省関東信越地区麻薬取締部の捜査チームが動きます。彼らは、ヒートに関わる事件を解決するために奔走しますが、その捜査は容易ではありません。そんな折、広域指定暴力団「宏龍会」の渉外委員長・山崎が接触を試みます。彼の提案は、情報を共有しながら仙道を捕えるという策略でした。信頼性は疑わしいものの、捜査を進めるために共同作業が始まります。

しかし運命は残酷で、仙道は死体で発見され、その周囲には七尾の指紋が残されていたのです。この状況から、彼の無実を証明するための暗闘が始まります。

登場人物たち

本作には、多彩なキャラクターが登場し、それぞれが独自のバックグラウンドを持っています。七尾究一郎は、エース級の麻薬取締官であり、合気道の有段者としても知られています。特異な体質を持ち、どんな状態でも捜査活動を続けられる彼は、関東一円の捜査官の中でも名を知られる存在です。また、彼のチームには、短気な鰍沢や、几帳面な釣巻、直情径行な熊ヶ根などがいます。上司の篠田は、現場での経験を重んじる理知的なキャラクターで、捜査の指導者として七尾からも信頼を得ております。

殺人事件とその背後

仙道寛人は、ヒートの製造者であるとも言われ、彼の死は物語のカギを握ります。過去にスタンバーグ社で薬の情報を担当していた彼は、行方不明の間に多くの若者にヒートを供給していたとされています。ヒートの開発者である桐生の存在も物語に影を落とし、さまざまな秘密が絡み合います。

さらに、警察関係者として七尾を取り調べる仁藤や、宮條貢平なども登場し、ストーリーが深まります。現実と虚構が交錯しながら、キャラクター同士の関係性が進展していく様は、読者に緊迫感を与えます。

緊迫感あふれる結末

物語は、捜査が進むにつれて展開が複雑になり、七尾自身が窮地に立たされます。しかし、彼が持つ特異な体質や仲間たちとの絆を活かし、困難に立ち向かう姿勢が描かれます。果たして、七尾は真実を明らかにし、無実を証明して事件を解決できるのでしょうか。

『ヒートアップ』は、緻密に構築されたストーリーと強いキャラクターたちを通じて、読み手に深い考察を促す作品です。麻薬というテーマを扱いながら、人間の内面や社会の闇についても考えさせられる一冊です。

もう一度検索