ビワマス

ビワマスについて

ビワマス（琵琶鱒、学名：Oncorhynchus masou rhodurus）は、サケ目サケ科に属し、唯一日本の琵琶湖に生息する固有の淡水魚です。この魚は、産卵期になると大雨の日に河川を遡上する様子から「アメノイオ」とも呼ばれています。この特徴的な行動がビワマスの生態を象徴しています。

形態と特徴

ビワマスの成魚は通常40〜50 cmの全長を持ち、特に大きなものでは70 cmを超えることもあります。幼魚の頃には体側に朱点（パーマーク）が特徴として見られますが、体長20 cmほどでこのパーマークは消失します。ビワマスはサクラマスとヤマメの亜種として知られ、DNAの特徴も外観もサクラマスに類似していますが、眼が大きく、側線の横列鱗数が21〜27本と少し異なることで識別できます。

また、日本国内では琵琶湖だけでなく、栃木県中禅寺湖や長野県木崎湖などに移植され、人工孵化も行われています。これは、ビワマスの存続のための重要な取り組みです。

生態と成長

ビワマスは母川回帰本能を持ち、10月中旬から11月下旬の間、生まれた川に遡上し産卵します。主にイサザ、スジエビ、コアユを食料とし、春には稚魚が孵化して浮上します。稚魚は小判型のパーマークと小さな朱点を持ち、成長を続け約8 cmになるとスモルト化の過程に入ります。

スモルト化したビワマスは体高が減少し、体側と腹部が銀白色に変わりますが、ビワマスではアマゴよりも小さくスモルト化してもパーマークが残る傾向があります。スモルトは河川を下り、琵琶湖の低水温域に移動しながら小魚やエビ、水生昆虫を捕食し、成長には2年から5年を要します。

繁殖と成魚の特徴

産卵の時期が近づくと、ビワマスのオス・メス両方に婚姻色が浮かび上がります。特にオスは、強い赤や緑の模様が表れ、顎が曲がる「鼻曲がり」と呼ばれる現象が見られます。親魚は9月から11月に川に遡上し、産卵後は寿命を迎えます。琵琶湖には近縁のアマゴも生息しており、両者は混同されることがあります。

保全状況

現在、ビワマスは「準絶滅危惧（NT）」に分類されています。生息数は40万〜50万尾で、数十年前と同様の生息水準が保たれています。これは、スモルトが迅速に川を下り琵琶湖の深場に移動するため、外来魚の影響を受けにくいためと考えられています。

また、人工孵化した稚魚の放流や養殖も行われており、漁業利用と保全のバランスが重要視されています。

漁業と食用利用

ビワマスは主に刺網漁法や引縄釣法によって漁獲されており、資源保護のために全長25 cm以下のビワマスの採捕は禁止されています。禁漁期間は10月から11月まで設けられ、捕獲後の報告も義務付けられています。

食用としては、刺し身や寿司、揚げ物など多彩な料理で楽しめ、寄生虫がないため冷凍せずとも生食が可能とされています。また、産卵期の魚よりも琵琶湖を回遊中のスモルトの方が美味と評判です。ビワマスの卵は、醤油漬けなどにされ、海産のサケ・マス類よりも生臭さが少なく、珍味とされています。さらに、はらこ飯に似た料理やイクラ丼も人気があります。

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