ビオン

ビオン：ソ連・ロシアの生物衛星

ビオン（ロシア語：Бион、ラテン文字表記例：Bion）は、ソ連およびロシアが開発した生物衛星です。ビオコスモス（Биокосмос, Biocosmos）という名前でも知られています。この衛星は、宇宙空間における生物学的実験を目的として設計されました。

初期のビオン

1971年、ソ連とアメリカの間で宇宙開発協力に関する合意が調印され、ソ連は自国の生物実験衛星にアメリカの実験ペイロードを搭載することを提案しました。これがビオン計画の始まりです。

ビオンは、偵察衛星ゼニットをベースに設計されました。ゼニットは、ボストーク宇宙船と共通の設計を持つ衛星で、大気圏突入カプセルを備えており、内部は気圧や温度が制御されていたため、生物実験への転用が容易でした。実験後、ペイロードは地上に帰還しました。また、ビオン計画の一環として、ナウカと呼ばれる外付けモジュールも開発され、ゼニット偵察衛星に取り付けられました。

ビオンの打ち上げは1973年に開始され、ほとんどの機体がコスモス衛星としても登録されました。1975年には、最初のアメリカの実験ペイロードが搭載され、その後、多くの国が実験に参加しました。実験内容は、無重力環境への生物の適応や、放射線が生物に与える影響など、多岐にわたりました。打ち上げは平均して2年に1回程度のペースで行われ、初期の5機では小動物、植物、微生物が使用されましたが、6号機以降ではサルを使った実験も行われました。1996年のビオン11号機をもって、初期のビオン計画は一旦終了しました。

ビオン計画終了後、回収型衛星であるフォトン衛星が、生物実験に利用されるようになりました。フォトン衛星は、本来、物理学や材料科学などの微小重力実験用でしたが、生物実験にも応用されました。

ビオンM

2013年には、改良型であるビオンMの運用が開始されました。ビオンMでは、カプセルに結合する機械船が改良され、軌道修正能力や着陸地点の制御が向上しました。また、太陽電池の追加と生命維持装置の改良により、軌道上での実験期間は従来の3週間から最大半年間に延長されました。さらに、運用軌道の高度も変更され、放射線量の多い575kmの軌道で、宇宙線被曝実験を効率的に行うことが可能になりました。

ビオンMの1号機は、2013年4月19日にバイコヌール宇宙基地からソユーズ2.1aロケットで打ち上げられ、地球周回軌道に投入されました。同年5月19日には地球に帰還しましたが、ハツカネズミの半数やスナネズミが全て死亡しました。しかし、ロシア科学アカデミーは、これらの動物の大量死は予測された結果であり、有人火星飛行に向けた貴重なデータが得られたと発表しました。

打ち上げリスト

各ビオン衛星では、様々な種類の実験が行われました。詳細なリストは割愛しますが、生命科学分野における重要な成果が多数得られています。

関連項目

ゼニット (人工衛星)
コスモス衛星
フォトン衛星

参考文献

（参考文献リストは省略）

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