ピーター・ワッツ

ピーター・ワッツは、カナダ・カルガリー出身のSF作家であると同時に、海洋哺乳類の生物学者という異色の経歴を持つ人物だ。ブリティッシュコロンビア大学で博士号を取得した彼は、1990年、短編小説『A Niche』で作家デビューを果たす。この作品は1992年、カナダのSF賞であるオーロラ賞を受賞し、その才能を早くも開花させた。

彼のキャリアはその後も順風満帆であった。1999年発表の第一長編小説『Starfish』は、翌年のジョン・W・キャンベル記念賞にノミネートされ、高い評価を得た。この作品は『Maelstrom』（2001年）、『βehemoth』（2005年、二分冊刊行）と共に「リフターズ三部作」を形成し、彼の代表作の一つとして広く知られるようになった。

2006年発表の『ブラインドサイト』は、ワッツの作家としての地位を不動のものにした作品と言えるだろう。この長編小説は、2007年のヒューゴー賞、ローカス賞、ジョン・W・キャンベル記念賞、サンバースト賞、オーロラ賞など、数々の権威ある賞の候補、あるいはファイナリストにノミネートされた。さらに、その高い評価は世界中に広がり、複数の言語に翻訳された。日本では2014年の星雲賞海外長編部門を受賞、ポーランド、ロシア、フランス、スペイン、フィンランドなどでも受賞歴を重ねるなど、国際的な成功を収めた。

彼の才能は長編小説にとどまらない。中編小説『島』で2010年ヒューゴー賞中編小説部門を受賞、また短編小説『遊星からの物体Xの回想』では2011年シャーリイ・ジャクスン賞短編部門を受賞するなど、あらゆる長さの小説で高い評価を得ている。さらに、SFアニメーションやゲームにも関与しており、ゲーム開発会社Crytek社ではライターやアートコンサルタントとして活躍、2011年には同社のFPSゲーム『Crysis 2』のノベライズも手がけている。彼の多様な活動は、彼の才能の幅広さを示す証と言えるだろう。

日本においても、ピーター・ワッツの作品は高い評価を受けている。『ブラインドサイト』は星雲賞を受賞しただけでなく、『SFが読みたい！2014年版』で「ベストSF2013 海外篇」第2位にも選ばれた。また、日本オリジナル編集による短編集『巨星』も、『SFが読みたい！2020年版』で「ベストSF2019 海外篇」第2位にランクインするなど、日本における人気も高いことがわかる。

2009年には小説家のCaitlin Sweetと結婚。2016年にはテレビドラマ『PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット』のノベライズを依頼されたものの、事情によりキャンセルされた経緯を自身のブログで公開している。なお、イギリスのミュージシャンであるピーター・ワッツとは別人である点を注意しておきたい。

ピーター・ワッツは、海洋生物学者としての知識と経験を活かした緻密な描写と、斬新なアイデアで読者を魅了する、稀有な才能を持つ作家だ。彼の作品は、これからも世界中のSFファンを魅了し続けるだろう。彼の幅広い活動と、高い評価は、今後のSF界における彼の存在感を示唆していると言えるだろう。

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