ファットクライアント

ファットクライアントとは

ファットクライアント（またはシッククライアント）は、クライアントサーバモデルにおけるクライアントコンピュータの一形態です。サーバに依存せず、単独で豊富な機能を提供できる点が特徴です。かつては単に「クライアント」と呼ばれていましたが、機能が限定的なシンクライアントが登場したことで、区別するために「ファットクライアント」と呼ばれるようになりました。

ファットクライアントは、サーバやネットワークへの接続を必要とするものの、多くの処理を接続なしで実行できます。これに対し、シンクライアントは処理をサーバに依存し、入力データの処理や検証のたびにサーバにアクセスする必要があります。

クライアントとサーバの役割分担

クライアントサーバ型アプリケーションの設計において、どのタスクをクライアントで実行し、どのタスクをサーバで実行するかは重要な決定です。この決定は、クライアントとサーバのコストだけでなく、アプリケーションの堅牢性やセキュリティ、さらには将来の修正や移植の柔軟性にも影響を与えます。

例えば、描画アプリケーションの場合、画像をサーバからダウンロードした後は、クライアント上でローカルに編集を行う方が効率的です。この場合、クライアントはファットクライアントとして機能し、初期ダウンロードや編集後のアップロード時には時間がかかるものの、編集作業自体は高速に行えます。逆にシンクライアントでは、画像の各パーツをサーバからダウンロードし、編集のたびにサーバと通信する必要があるため、初期表示は速いものの、編集作業は遅くなります。

歴史的背景

初期のクライアントは、VT-100のような単純なビデオ表示端末が主流でした。ファットクライアントが広く使われるようになったのは、パーソナルコンピュータ（PC）が普及してからです。シンクライアントは、PCが高価だった時代に、より多くのユーザーにデスクトップ環境を提供するために登場しました。しかし、PCの価格低下とソフトウェアの低価格化が進むにつれて、応答性やGUIの点で優れたファットクライアントが主流となりました。近年では、インターネットの普及に伴い、高性能なPCをクライアントとして使用しつつ、システムの処理分担はシンクライアントモデルとする傾向も見られます。

ファットクライアントの利点

ファットクライアントには、以下のような利点があります。

サーバへの要求が少ない: クライアント側で多くの処理を分担するため、サーバ側の性能はそれほど高くなくても済み、サーバのコストを抑えられます。
オフライン処理が可能: 常にサーバに接続している必要がないため、ネットワーク接続が不安定な環境でも作業を継続できます。
高いマルチメディア性能: マルチメディアアプリケーションは高帯域幅を必要としますが、ファットクライアントはローカルで処理を行うため、快適な動作が期待できます。
高い柔軟性: ローカルリソースを必要とするOSやアプリケーションも動作可能です。シンクライアントでは難しいソフトウェアも実行できる場合があります。

関連事項

シンクライアント
ディスクレスワークステーション
* Lotus Notes

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