フォルクスワーゲン・カルマンギア

フォルクスワーゲン・カルマンギア：ビートルをベースにしたスタイリッシュなクーペ

フォルクスワーゲン・カルマンギアは、ドイツのフォルクスワーゲン社が製造販売した、ビートル（タイプ1）をベースとしたクーペ型のスペシャルティカーです。その誕生には、ドイツのコーチビルダーであるカルマン社と、イタリアのカロッツェリア・ギア社の協業が深く関わっています。カルマンギアという車名は、両社の社名から取られています。

1955年7月、タイプ1をベースとした「1200」が発表され、その後、タイプ3をベースとした「1500」と「1600」が1961年に発売されました。クーペモデルに加え、オープンモデルとなるカブリオレも存在しました。

カルマンギア最大の特徴は、その流麗なスタイリングです。ベースとなったビートルやタイプ3セダンとは異なり、ギア社が手がけた洗練されたデザインは、多くのファンを魅了しました。タイプ1ベースのモデルは、全面的に曲面で構成されたボディが特徴的である一方、タイプ3ベースのモデルでは、広いガラスエリアと直線的なキャラクターラインが採用され、シボレー・コルヴェアの影響を感じさせるデザインとなっています。一方で、ヘッドライトやホイールキャップなどは、フォルクスワーゲンの特徴を色濃く残していました。

カルマン社は、フォルクスワーゲンのシャーシにボディを組み込むコーチワークを担当しました。パワートレインやシャーシの基本構造は、タイプ1と共通で、水平対向4気筒の空冷OHVエンジンをリアに搭載するRRレイアウトも踏襲されています。

タイプ3ベースのモデルは、タイプ1ベースのモデルほどの人気は得られず、1969年に生産を終了しました。一方、タイプ1ベースのモデルは、安全対策の強化や排気量拡大などの改良を重ねながら、1973年まで生産され、ロングセラーモデルとなりました。ブラジルでは、フォルクスワーゲン・ド・ブラジルが、1970年から1975年まで独自モデルの「TC」を生産していました。

カルマンギアは、量産車であるフォルクスワーゲンをベースにしていたため、比較的安価でメンテナンスも容易でした。特にアメリカ市場では高い人気を誇り、「プアマンズ・ポルシェ（貧乏人のポルシェ）」と呼ばれるほどでした。これは、そのスタイリッシュなデザインと、扱いやすい性能のバランスの良さが評価されたためです。決して高性能な車ではありませんでしたが、低車高と優れたデザインにより、スポーツカーのような走りの感覚を気軽に味わえる点が魅力でした。ブラジル生産分を含め、累計44万台以上が生産されました。日本では、ヤナセが正規輸入販売を行っていました。

生産中および生産終了後も、カルマンギアのカスタマイズは盛んに行われてきました。ローダウンや排気量アップといったチューニングが施され、現在でも多くの社外部品が販売されています。

カルマンギアの歴史

1953年：プロトタイプの製作
1955年7月：「1200」クーペ発表
1957年9月：「1200」カブリオレ発表
1959年：デザイン変更（ヘッドライト、フロントグリル、テールレンズ）
1961年：「1500」クーペ発表
1962年：「1500」クーペ発表
1965年：タイプ1系は排気量1.3Lへ、タイプ3系に「1600」登場
1966年：タイプ1系は排気量1.5Lへ、電装系を6Vから12Vに変更、ホイール形状変更
1969年：タイプ3系生産終了、タイプ1系は排気量1.6Lへ、ウインカーレンズとテールレンズのデザイン変更
1970年：エンジンをデュアルポート化、「TC」（ブラジル）登場
1971年：デザイン変更（テールレンズ、バンパー）
1973年：タイプ1系生産終了
1975年：「TC」生産終了

関連項目

フォルクスワーゲン
フォルクスワーゲングループ
フォルクスワーゲン・ド・ブラジル
フォルクスワーゲン・タイプ1
フォルクスワーゲン・タイプ3
フォルクスワーゲン・シロッコ（カルマンギアの後継車）
カルマン
* カロッツェリア・ギア

もう一度検索