フォー・ザ・スターズ

『フォー・ザ・スターズ』は、2001年にリリースされた、スウェーデン出身の著名なメゾソプラノ歌手、アンネ・ソフィー・フォン・オッターと、イギリスを代表するシンガーソングライターであるエルヴィス・コステロによる、異色のコラボレーション・アルバムです。クラシック界のスターとロック/ポップス界のアイコンがタッグを組んだこの作品は、フォン・オッターにとってキャリア初のクロスオーバー・アルバムとして位置づけられています。

この企画が生まれた背景には、エルヴィス・コステロがアンネ・ソフィー・フォン・オッターの熱烈なファンであったという事実があります。彼は、フォン・オッターのロンドンでのリサイタルを鑑賞した後、楽屋を訪れ、直接コラボレーションの可能性を打診しました。この出会いが、『フォー・ザ・スターズ』制作の直接的なきっかけとなったのです。

アルバムの選曲は非常に多岐にわたり、コステロ自身が書き下ろした楽曲はもちろんのこと、フォン・オッターも積極的にアイデアを出し合いました。そこには、ビートルズやトム・ウェイツといったロック/ポップスの名曲、ニーナ・シモンの「ジ・アザー・ウーマン」のようなジャズ/ブルースナンバー、そして彼女の母国スウェーデンの至宝であるABBAの楽曲などが含まれています。フォン・オッターは、これらの多様なジャンルの楽曲を歌いこなすため、従来のクラシックの発声法や表現方法にとらわれず、それぞれの楽曲に最適なアプローチを試行錯誤し、新しい歌唱スタイルを開拓していきました。この柔軟かつ真摯な音楽への取り組みが、アルバムに独自の魅力を与えています。

完成したアルバムは高い評価を受け、その発売を記念してライブハウスでのパフォーマンスも行われました。また、このユニークなコラボレーションがどのように実現し、アルバムが形作られていったのか、そしてその後のライブ公演に至るまでの過程は、あるテレビ局によってドキュメンタリー番組として詳細に記録されました。このドキュメンタリーは、日本においてもクラシカ・ジャパンで放映され、音楽ファンに制作の舞台裏を垣間見せる貴重な機会となりました。

さらに、アルバムのプロモーション活動として、二人はアメリカの主要なメディアにも積極的に登場しました。特に、人気トーク番組である「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」や「Charlie Rose」に音楽ゲストとして出演し、そのパフォーマンスを披露することで、より幅広い層にアルバムの存在と彼らのユニークな音楽性を知らしめました。

『フォー・ザ・スターズ』は、ジャンルの壁を超えたアーティスト間のリスペクトと音楽への探求心が見事に結実した作品であり、クラシックとポップスの両方のリスナーにとって新鮮な驚きと感動を提供するアルバムとして、今なお語り継がれています。

収録曲

ノー・ワンダー (No Wonder) (コステロ)
ベイビー・プレイズ・アラウンド (Baby Plays Around) (ケイト・オリオーダン、デクラン・マクマナス)
ゴー・リーヴ (Go Leave) (ケイト・マガリグル)
ロープ (Rope) (コステロ、フレッシュカルテット)
ドント・トーク (プット・ユア・ヘッド・オン・マイ・ショルダー) (Don't Talk (Put Your Head On My Shoulder)) (ブライアン・ウィルソン, トニー・アッシャー)
ブロークン・バイスクルス/ジャンク (Broken Bicycles / Junk) (トム・ウェイツ / マッカートニー)
ジ・アザー・ウーマン (The Other Woman) (ジェシー・メイ・ロビンソン)
ライク・アン・エンジェル・パッシング・スルー・マイ・ルーム (Like An Angel Passing Through My Room) (ベニー・アンダーソン, ビョルン・ウルヴァース)
グリーン・ソング (Green Song) (スヴァンテ・ヘンリソン)
エイプリル・アフター・オール (April After All) (ロン・セクスミス)
ユー・スティル・ビリーヴ・イン・ミー (You Still Believe In Me) (ウィルソン,アッシャー)
アイ・ウォント・トゥー・ヴァニシュ (I Want To Vanish) (コステロ)
フォー・ノー・ワン (For No One) (マッカートニー, レノン)
シェームド・イントゥー・ラヴ (Shamed Into Love) (マクマナス,ルーベン・ブラデス)
ジャスト・ア・クリオ (Just A Curio) (フレッシュカルテット)
ジス・ハウス・イズ・エンプティ・ナウ (This House Is Empty Now) (バート・バカラック, コステロ)
テイク・イット・ウィズ・ミー (Take It With Me) (ウェイツ, キャスリーン・ブレナン)
フォー・ザ・スターズ (For The Stars) (コステロ)
* ユー・ゴー・トゥー・マイ・ヘッド (You Go to My head) (クーツ, ヘヴン) (日本盤ボーナス・トラック)

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