フジツボ

フジツボの生態と特徴

フジツボ（藤壺、富士壺）は、富士山のような形をした石灰質の殻を持つ生物で、甲殻類の中でも特異な固着生活を送る動物です。大きさは数ミリメートルから数センチメートルまで様々で、もともとは貝類の一種として誤解されていましたが、現在では甲殻類として広く認識されています。1829年にJ.V.トンプソンによって、フジツボが自由遊泳するノープリウス幼生として孵化することが確認され、その後、チャールズ・ダーウィンがフジツボの系統を研究し、分類学的基礎を築いたのです。

生態と生活様式

フジツボは、固着生活に特化した形態を持っています。エビやカニが移動に用いる脚に相当する部分は、蔓状の蔓脚（まんきゃく）で、主に海水中のプランクトンを濾過して栄養を摂取します。また、体を覆う殻は外骨格から分泌され、一生にわたって成長し続けます。フジツボは脱皮を行い、殻の中から内部の蔓脚などを廃棄することが一般的です。この脱皮殻は沿岸などで見かけることが多く、プランクトンネットに引っかかることでも知られています。

幼生の段階では、フジツボは場所を選んで固着します。他の個体が既に固着している場所を選ぶことで、効率的に繁殖するための場所を求めるのです。また、雌雄同体であるため、安全に繁殖を行うことが可能ですが、自家受精はほとんどありません。雄性生殖器が隣接する個体に挿入することで交尾し、受精卵は殻内で育てられ、やがてノープリウス幼生として外に放出されます。

生育環境

フジツボは世界中の海洋の潮間帯から深海まで生息していますが、淡水には適応していません。岩や船底、貝殻などに付着し、全く移動しません。潮間帯ではしばしば優占し、顕明な帯状分布を示すことがよくあります。また、イシサンゴ類やクジラの皮膚に付着することがあり、宿主の体に食い込んで埋没していることもあります。

人間生活との関係

フジツボは、水産業において重要な影響を及ぼしています。具体的には、二枚[[貝]]の養殖でフジツボが付着することで、潮通しが悪化し、成長が鈍ることが報告されています。特に東北地方ではミネフジツボが食用として珍重されています。かつては養殖の邪魔者として扱われたこともありますが、現在では高級食材として市場に流通しており、1キログラムあたり数千円の価格で取引されています。このように、フジツボの価値が見直されています。

一方で、船舶にも悪影響を及ぼすことで知られており、船底に付着することで水流の抵抗や燃費の悪化を引き起こします。この管理には多くの費用がかかります。また、発電所の冷却水取水口にフジツボが付着し、冷却効率を低下させることも問題視されています。

これらの側面から、フジツボは持続可能な海洋環境の一部としてだけでなく、経済活動に対する影響を考慮されながら利用される重要な生物であると言えるでしょう。

もう一度検索