ブルックス・ブラザーズ

ブルックス・ブラザーズ：アメリカン・クラシックの系譜と未来

1818年、アメリカ合衆国ニューヨークにて創業されたブルックス・ブラザーズは、世界最古の紳士服販売店として、その名を歴史に刻んでいます。エイブラハム・リンカーン、ジョン・F・ケネディ、バラク・オバマなど、歴代のアメリカ大統領に愛された同ブランドは、まさにアメリカン・クラシックスタイルを代表する存在と言えるでしょう。リンカーン暗殺時に着用していたコートも、ブルックス・ブラザーズで仕立てられたものだったという逸話も有名です。

ブルックス・ブラザーズの起源は、ヘンリー・サンズ・ブルックスによるH. & D. H. Brooks & Co.の設立に遡ります。その後、1845年にはアメリカで初めて既製のスーツを販売するなど、常に時代の先端を行く姿勢を貫いてきました。1850年にはブルックス兄弟が経営を引き継ぎ、現在の社名と、子羊のロゴである「ゴールデン・フリース」が採用されました。

アイコニックなアイテムとして知られるのが、ボタンダウン・カラーのシャツです。ポロ競技の選手が襟を風でめくれ上がらないようボタンで留めていたことにヒントを得て、1896年にブルックス・ブラザーズが商品化。その後、オックスフォード生地のゆったりとしたシルエットのドレスシャツは、同社の定番として長く愛され続けています。このボタンダウンシャツは、アメリカントラディショナルスタイルの象徴的なアイテムの一つとして、現在も多くのファンを魅了し続けています。

海外展開は1979年の日本進出が最初で、その後は欧米やアジアなど世界各国へと拡大していきました。しかし、2020年、新型コロナウイルスの世界的流行という未曽有の危機に見舞われます。長期間に渡る店舗休業の影響を受け、ブルックス・ブラザーズは経営破綻、連邦破産法11章の適用を申請せざるを得ませんでした。

しかし、この危機はブルックス・ブラザーズの終わりではなく、新たな始まりでした。2020年8月、オーセンティック・ブランズ・グループとサイモン・プロパティ・グループの合弁会社であるSPARC Group LLCに売却され、ブランドの未来に向けた再出発を遂げました。

日本においても、1979年に設立されたブルックスブラザーズジャパンは、本社の経営破綻後も、ダイドーリミテッドとの合弁会社として事業を継続しています。当初は全ての店舗を維持すると発表していたものの、2020年には一部店舗の閉鎖を余儀なくされました。2020年11月には、ダイドーリミテッドが株式を追加取得し、ブルックスブラザーズジャパンは同社の連結子会社となりました。これにより、安定した経営基盤のもと、ブランドの伝統と価値を継承していくことが期待されています。

ブルックス・ブラザーズは、アメリカン・クラシックスタイルの代名詞として、長年にわたって多くの人々を魅了し続けてきました。経営破綻という困難を乗り越え、新たなステージへと進む同ブランドの未来に、世界中のファッションファンが注目しています。伝統と革新を巧みに融合し、時代を超えて愛されるブランドとして、その歩みをこれからも続けていくことでしょう。

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