プライム

プライム記号（′）について

プライム記号（′）は、特定の文字や数字の上に付され、主に類似物の提示や単位量の分割を示すために用いられます。この記号は、アクセント記号と共通の起源を持ち、素早く書き添えられることから「ダッシュ」とも呼ばれます。プライム記号という名称は、ラテン語が基になった印刷用語から来ていて、その利便性から広範な分野で利用されています。

プライムの歴史

プライム記号の起源は古代にさかのぼり、エジプトやバビロニアの影響を受けたギリシャで、分数を表すために使われました。例えば、1/60や1/12などを示す際に、この記号が利用されていました。また、ギリシャ語では、アクセント記号あるいは帆船の帆柱を意味するケライヤ（κεραία）として認知されていました。17世紀のラテン語の数学書『Clavis Mathematicae』では、プライム記号やダブルプライムなどが使われ、単位量の分割を明示するために使用例が記されています。

19世紀のフランスで発達した解析学や図学の領域でも、プライム記号は重要な役割を果たし、微分記号や射影点の表記に用いられました。このように、プライム記号はさまざまな歴史的背景を持ち、科学的な表現に欠かせない記号として確立されてきました。

プライム記号の呼称

プライム記号は、ラテン語で「第一の小部分」を意味する「pars minuta prima」に由来し、この言葉からプライム（prime）という名が付けられました。ただし、この用語は本来「minute」に基づくもので，因此、プライムとするのは本来不適切なところがあります。数学史に名を刻むラグランジュは、記号「′」や「″」を使って導関数を表現したため、現在のフランス語の用法に繋がっています。

アメリカでは20世紀初頭まで、プライム記号は「エックス・プライム」といった風に読まれていましたが、その後、記号そのものがプライムと認識されるようになり、ダブルプライムは「ダブルプライム」と呼ばれるようになりました。英語圏の他の国々と同様、日本やインドなどでも、プライムがダッシュと表現されることが多く見られます。

プライム記号の用途

プライム記号は、単位表記においても重要な役割を担っています。平面角度の分や秒、時間、またヤード・ポンド法における長さの表現に用いられ、実際の例としては次のようなものがあります。

• - 138° 47′ 53.78″（角度）
• - 1 h 22′ 43.68″（時間）
• - 4′ 11″（フィートとインチ）

腕時計の製造では、トリプルプライムを用いてリーニュ（1インチの12分の1）を示し、金網業界では、数値の前にダブルプライムを付けてメッシュ数を表現することが一般的です。

数学の分野では、プライム記号が類似の要素を示すために広く利用されます。例えば、A′はAに似たものを表し、A″はそのA′に似たものを表すといった使われ方です。導関数に関連する使い方では、f ′(x)やf ″(x)が1階および2階の導関数を示し、これもラグランジュの記法として知られています。

物理学や化学の領域でも、この記号の使用は一般的で、たとえば物体の速度の変化を示したり、官能基を区別するために使われます。生物学の分野では、DNAやRNAの構造を表現する際に、プライム記号が重要な役割を果たします。言語学においても、翻字作業で特定の音を示すためにプライムが使用されることがあります。

音楽に関しては、オクターブを区別するために小文字のアルファベットにプライムを付けて表記することで、音の高さを示すことができます。また、楽曲分の構造を示す際に類似旋律にプライムを付けることは一般的です。

他の記号との違い

プライム記号は、アポストロフィーやクォーテーションマーク、アクセント記号などと似ていますが、電子印刷技術においてはそれぞれに異なるコードが付与されています。プライム記号が使用できない場合は、アポストロフィー（U+0027）を代わりに使うことがあるため、注意が必要です。カスタマイズされたフォントの中では、プライムは特に意味を持つ記号として扱われ、科学や数学の分野での利用が進んでいます。

このようにプライム記号は、歴史的な背景や広範な用途に裏打ちされた多機能な記号であり、現代のさまざまな分野で活用されています。

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