プラネット・ウェイヴズ

ボブ・ディラン『プラネット・ウェイヴズ』：ザ・バンドとのコラボレーションと商業的成功、そして短命なアサイラム時代

1974年、ボブ・ディランはアサイラム・レコードに移籍し、14枚目のスタジオ・アルバム『プラネット・ウェイヴズ』をリリースしました。このアルバムは、ディランにとって初めて全米アルバムチャートBillboard 200で1位を獲得した作品であり、イギリスでは最高7位を記録するなど商業的な成功を収めました。アメリカレコード協会(RIAA)からもゴールドディスクに認定されています。

アルバムのジャケットはディラン自身による作品で、初回盤にはディラン自身のライナーノーツが掲載されていました。アルバム・タイトルは当初、「ラブソングス」「セレモニー・オブ・ザ・ホースマン」など複数の候補がありましたが、最終的には親友であるビート詩人アレン・ギンズバーグの作品と、ディラン自身の興味を持っていた占星術からインスピレーションを得て「プラネット・ウェイヴズ」に決定しました。

音楽面では、ディランが長年親交のあるザ・バンドを初めて全曲のバックバンドとして起用しています（「ウエディング・ソング」を除く）。ザ・バンドのメンバー、ロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、ガース・ハドソン、レヴォン・ヘルムといった錚々たるメンバーが参加し、アルバムに深みと幅を与えています。彼らの演奏は、ディランの楽曲に新たな色彩をもたらし、その独特の世界観をより一層際立たせています。

アルバム収録の楽曲には、ブルック・ベントンの曲「ゴーイング・ゴーイング・ゴーン」のフレーズをそのまま使用したものや、ファッツ・ドミノの楽曲タイトルから着想を得た「こんな夜に」など、他のアーティストからの影響も伺える楽曲も含まれています。アルバムは、アメリカでは発売直後にディランが古巣のコロムビア・レコードに戻ったため、短期間で廃盤となってしまいました。その後、1977年にコロムビアから再発売されるまでは、中古市場でのみ流通していました。

『プラネット・ウェイヴズ』のリリースと同時に、ディランとザ・バンドは全米ツアーを行い、8年ぶりのコンサート・ツアーということもあり、大きな話題を集めました。このツアーは、アルバムの成功をさらに後押しし、ディランの音楽的復活を印象付けるものとなりました。

アルバムには、後に様々な形でリリースされたアウトテイクも存在します。1973年6月に録音された「いつまでも若く」のデモバージョンは、1985年のアルバム『バイオグラフ』に収録され、11月2日のセッションで録音された「ノーバディ・エクセプト・ユー」は、『ブートレッグ・シリーズ第1～3集』（1991年）に収録されています。これらのアウトテイクは、アルバム制作の裏側や、ディランの音楽的探求を垣間見せてくれる貴重な資料となっています。

『プラネット・ウェイヴズ』は、ディランのキャリアにおいて重要な位置を占めるアルバムです。商業的な成功だけでなく、ザ・バンドとのコラボレーション、そして短命ながらも印象的なアサイラム時代という、様々な要素が複雑に絡み合った作品と言えるでしょう。このアルバムは、ディランの音楽的進化と、時代背景を反映した、彼にとってのターニングポイントと言える作品です。日本においては、2004年に再発CDがリリースされ、オリコンチャートで最高279位を記録しています。

収録曲:

Side 1
こんな夜に - On a Night Like This
ゴーイング・ゴーイング・ゴーン - Going, Going, Gone
タフ・ママ - Tough Mama
ヘイゼル - Hazel
君の何かが - Something There is About You
いつまでも若く（スロー） - Forever Young

Side 2
いつまでも若く - Forever Young
悲しみの歌 - Dirge
天使のような君 - You Angel You
さよならと云わないで - Never Say Goodbye
ウェディング・ソング - Wedding Song

参加ミュージシャン:

ボブ・ディラン - ギター、ハーモニカ、キーボード、ボーカル
ロビー・ロバートソン - ギター、ベース・ギター
リック・ダンコ - ベース・ギター、フィドル、ボーカル
ガース・ハドソン - キーボード、オルガン、ピアノ、アコーディオン、サキソフォン
リチャード・マニュエル - ピアノ、キーボード、ドラムス
レヴォン・ヘルム - ドラムス、マンドリン、ボーカル

制作スタッフ:

ロブ・フラボニ - プロデューサー＆エンジニア
Nat Jeffery - アシスタント・エンジニア
ロビー・ロバートソン - スペシャル・アシスタント
David Gahr - フォトグラフィ
Joel Bernstein - フォトグラフィ

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