プレイタイム

映画『プレイタイム』：ジャック・タチが創造した巨大な夢と現実

『プレイタイム』は、フランスの映画監督ジャック・タチが1967年に公開した作品です。『ぼくの伯父さん』で名声を確立したタチが、自身の集大成として莫大な資金を投じて制作に挑んだ、フランス映画史に残る超大作として知られています。手回しオルガンをtrailer 2014に使用した映画としても知られています。

巨大なセット「タチ・ヴィル」

映画の最大の特徴は、パリ郊外のヴァンセンヌに建設された2,500平方メートルもの巨大なセット「タチ・ヴィル」です。ガラス張りの超高層ビル、空港、博覧会場、アパート、オフィスなど、近代的な建築群が細部まで作り込まれました。タチは高画質の70mmフィルムを使用し、徹底的に細部にこだわり、全体の3分の1を撮り直したり、ほぼ全ての俳優のパントマイムを自ら指示するなど、妥協を許さない姿勢で制作に臨みました。その結果、撮影期間は2年、制作費は現在の価値にして1,540万ユーロ（当時の価格で1兆93億円）という、フランス映画としては前例のない巨額に達しました。

あらすじ

物語は、近未来のパリを舞台に展開されます。主人公のユロ氏は、ガラス張りの超高層ビルが立ち並ぶ見慣れないパリの街で、アメリカからの団体旅行客らと共に戸惑いながらさまよいます。そこで、アメリカ人観光客の若い女性バーバラと出会い、何度かすれ違います。そして夜、たまたま居合わせた夜会で、ユロとバーバラは共にダンスを踊り、交流を深めます。

興行的な失敗と高い評価

しかし、映画の評価は分かれました。フランソワ・トリュフォーら一部の映画人からは絶賛されたものの、アメリカでの配給がうまくいかなかったことや、タチに反感を抱くマスコミからの酷評などにより、興行的には惨敗に終わります。再利用の希望も叶わず、「タチ・ヴィル」は取り壊され、タチ自身も破産してしまいました。

しかし、タチが「私の遺作」と語ったように、この作品には監督の全身全霊が込められていました。そのため、現在では多くの映画人から傑作として高く評価されています。

受賞歴

1968年度 パリ・アカデミー・デュー・シネマ グランプリ
1969年度 モスクワ国際映画祭 銀賞
1969年度 ウィーン映画祭 大賞
1969年度 ストックホルム・スウェーデン映画 オスカー

短編『ぼくと伯父さんの授業』

『プレイタイム』の製作中には、『ぼくと伯父さんの授業』という短編も撮影されました。この作品では、ジャック・タチがパントマイムの授業を行い、「煙草」「魚釣り」「乗馬」など、実演を交えながらパントマイムの奥深さを語ります。『プレイタイム』の巨大なセットがスタッフによって運ばれる様子なども見ることができます。

幻となった映画学校計画

「タチ・ヴィル」のセットは、映画に描かれた光景のように、映画学校として再利用する構想がありました。しかし、文化大臣アンドレ・マルローの許可が得られず、その計画は実現することはありませんでした。

映画『プレイタイム』が残したもの

『プレイタイム』は、公開当時は不遇の作品でしたが、その革新的な映像表現と社会風刺は、後世の映画監督たちに大きな影響を与えました。タチが創造した「タチ・ヴィル」は失われてしまいましたが、映画『プレイタイム』は、映画史に輝く傑作として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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