ヘルメネギルド

ヘルメネギルドの生涯と反乱

ヘルメネギルド（Hermenegild）は550年頃に生まれた西ゴート王国の王族で、レオヴィギルド王の長男です。彼は、当時イベリア半島で支配的だったアリウス派の教育を受けましたが、カトリックの信仰を選び、これが後に父との確執を引き起こします。彼はカトリックへの改宗を果たす一方、アリウス派の教えを重んじる父レオヴィギルドとの関係が崩れ、最終的には反乱を起こすことになります。

家族・背景

ヘルメネギルドは、母親がヒスパノ・ローマ人のため、カトリックの文化的背景を受け継いでいました。彼は西ゴート王レオヴィギルドと、その妻であるヒスパノ・ローマ人のテオドシアとの間に生まれた長男であり、レカレド1世の兄として知られています。ヘルメネギルドの妻はアウストラシア王シギベルト1世の娘であるイングンデです。彼女はカトリック教徒でありながら、義理の母から信仰を捨てるように圧力をかけられていましたが、固く信仰を守りました。

カトリックへの改宗と反乱

579年、ヘルメネギルドはイングンデと結婚し、彼女の影響を受けてカトリックに改宗します。この改宗は家庭内に緊張をもたらし、彼の親族は彼にアリウス派の信仰に戻るように求めましたが、ヘルメネギルドはそれを拒否しました。これが彼の父に対して反乱を起こす原因となります。東ローマ帝国の支援を試みますが、期待した反応は得られません。最終的には教会に逃げ込み、妻のイングンデとも別れ、彼女はヒスパニアの東ローマ都市に息子を連れて逃れました。

イングンデは東ローマ帝国に保護を求めていましたが、彼女と息子は結局皇帝に引き渡されることがなく、イングンデはカルタゴで亡くなります。一方、ヘルメネギルドは父と交渉を続けますが、父は彼に降伏を勧め、最終的には墓穴に追い込まれてしまいます。

最期と評価

ヘルメネギルドはセビリアの塔に幽閉される中、アリウス派の聖職者によるミサを拒否します。その結果、古代の信仰に従った父により死刑を宣告され、処刑されることとなります。彼の死は、彼を殉教者として1595年に列聖する契機となりました。カトリックの信者たちにとって、彼は改宗者の守護聖人と見なされ、聖名祝日は4月14日とされています。

史料と影響

ヘルメネギルドに関する事績や反乱は、トゥールのグレゴリウスやビクラルのヨハネス、イシドールスの著作で記録されていますが、彼らの記述には相違が存在します。特に、イシドールスは彼を「父を裏切った長男」として否定的に記載しています。しかし、ローマ教皇グレゴリウス1世が彼の改宗を扱っているため、これは歴史的事実として認められています。

グレゴリウス1世やトゥールのグレゴリウスは、ヘルメネギルドの反乱をレカレド王の改宗の前史的出来事と位置づけています。この事象は、西ゴート王国における宗教的対立とその後の行動に深く関連しており、彼の生涯を理解する上で重要な要素となっています。

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