ボールねじ

ボールねじ：回転運動と直線運動を精密に変換する機械要素

ボールねじは、ねじ軸、ナット、ボール、そしてボールを循環させるための部品から構成される機械要素部品です。回転運動を直線運動へ、あるいはその逆の変換を、非常に滑らかで正確に行うことができます。一般的な締結用のねじとは異なり、そのねじ部は主に運動変換の役割を担っています。

ボールねじの仕組みと種類

ボールねじの心臓部は、ねじ軸とナットです。この2つの間に多数のボールが配置され、ねじ軸の回転によってナットが直線運動します。ボールの転動によって摩擦が低減され、高い効率と精度が実現します。さらに、ボールの循環を確実に行うために、様々な方式が採用されています。主な循環方式には以下のようなものがあります。

リターンチューブ式: ボールをチューブ内で循環させる方式。構造がシンプルで、小型化に適しています。
エンドデフレクタ式: ねじ軸の両端に設けられたデフレクタでボールを循環させる方式。リターンチューブ式に比べて、摩擦が小さく、高精度な動作が可能です。
エンドキャップ式: ねじ軸の端部に設けられたキャップでボールを循環させる方式。コンパクトな設計が可能です。
こま式: ボールをこま状の部品で循環させる方式。特殊な用途に適しています。
リターンプレート式: プレート状の部品でボールを循環させる方式。高剛性、高精度な動作が可能です。
ミドルデフレクタ式: ねじ軸の中間部にデフレクタを設けてボールを循環させる方式。長尺のボールねじに適しています。

ボールねじのサイズは様々で、精密機器に用いられる小径なものから、工作機械や搬送機械などに用いられる大径なものまで存在します。サイズによって用途が異なり、精密さが要求される用途には小径のボールねじが、高負荷用途には大径のボールねじが選択されます。

ボールねじの用途

ボールねじは、その高精度、高効率、低摩擦といった特性から、幅広い分野で活用されています。

当初は自動車のステアリングシステムに使用されるために開発されましたが、現在では半導体製造装置、液晶製造装置、検査装置、工作機械といった精密機器分野での使用が中心です。近年では、その用途はさらに拡大しており、医療機器、ロボット、食品機械、射出成型機、航空宇宙機器、自動車など、多様な産業機械に用いられています。

主要メーカー

ボールねじは、世界中で多くのメーカーによって生産されています。日本国内の主要メーカーとしては、日本精工、THK、黒田精工、ツバキ・ナカシマ、ケーエスエス、日本トムソン、第一測範、石坂工業、オージック（旧美原精工）などが挙げられます。海外では、PMI（台湾）、SKF（スウェーデン）、HIWIN（台湾）、TBI Motion、Bosch Rexrothなどが主要メーカーとして知られています。

まとめ

ボールねじは、その精密な運動変換能力と高い信頼性から、現代の産業機械に不可欠な要素部品となっています。今後ますます高度化する技術革新に伴い、ボールねじの応用範囲はさらに拡大していくと予想されます。

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