まつげ

まつげ：保護と美しさの両面を持つ繊細な体毛

まつげは、まぶたの縁に生える太くて長い体毛です。眉毛とともに目の周囲に集中しており、埃や異物から眼球を守る重要な役割を担っています。その構造や機能、成長過程、そしてまつげに関する様々な疾病、さらには化粧や美容との関わり、動物界におけるまつげまで、多角的に見ていきましょう。

まつげの構造と機能

人間のまつげは、上まぶたには3～4列、下まぶたには2～3列に並んで生えています。上まぶたのまつげの方が長く、太く、密度も高く、下まぶたよりも色が濃い傾向があります。これは、上まぶたが眼球の保護においてより重要な役割を果たしているためと考えられます。

まつげは、異物が目に入るのを防ぐだけでなく、皮膚感覚受容体によって接触を感知し、反射的にまぶたを閉じることで眼球を守っています。まつげの成長期間は約1ヶ月で、およそ3ヶ月周期で生え変わります。一本一本の成長速度は非常にゆっくりとしており、1日に伸びる長さは平均0.1mm程度です。

まつげの長さは個人差があり、平均的な長さとしては、上まつげが8～12mm、下まつげが6～8mmです。上まつげの本数は300～400本、下まつげは100～150本程度とされています。

まつげに関する疾病

まつげには様々なトラブルが伴う場合があります。

Madarosis（マダローシス）: まつげの脱落を伴う症状です。
眼瞼縁炎: まぶたの縁の炎症で、まつげの脱落を招くことがあります。
睫毛重生（二重まつげ）: まつげが複数列に生えてしまう先天的な発育異常です。
さかまつげ: まつげが眼球の方向に生えてしまう症状で、角膜などを傷つける可能性があります。歴史的には、絵馬による祈願や手術療法などが行われてきました。
抜毛症・抜毛癖: 無意識のうちにまつげを抜いてしまう精神的な症状です。
麦粒腫（ものもらい）: まぶたの脂腺やまつげ腺の炎症によって起こる腫れです。

まつげの美容と化粧

古くから、長いまつげは女性の美しさの象徴とされてきました。青銅器時代には既に、まつげを強調するためのコール（kohl）と呼ばれるマスカラの一種が存在していました。現代では、マスカラ、アイライナー、アイシャドウなど、様々な化粧品がまつげを美しく見せるために用いられています。

20世紀にはつけまつげが流行し、近年ではまつげの成長を促進する美容液なども市場に出回るようになりました。まつげをカールさせるアイラッシュカーラーや、エクステによる長さやボリュームの増加といった施術も一般的です。

動物のまつげ

まつげは人間だけでなく、多くの動物にも見られます。哺乳類ではラクダやキリン、ウマなど、様々な動物が特徴的なまつげを持っています。鳥類ではダチョウやサイチョウ科の鳥にも、まつげに似た構造が見られます。爬虫類では、マツゲハブというヘビが、その名の通り目の上にまつげのような突起を持っています。

まとめ

まつげは、単なる体毛ではなく、眼球保護という重要な機能を担うとともに、人間の美意識や文化とも深く関わっています。その繊細な構造と機能、そして様々な疾病や美容法、動物界における多様性などを理解することで、まつげという小さな器官が持つ奥深さを知ることができます。

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