マヌルネコ

マヌルネコ (Otocolobus manul)

マヌルネコは、ネコ科に属する動物で、モウコヤマネコとも呼ばれています。他のネコ科動物とは異なる独特な特徴を持ち、寒冷な環境に適応した生態を持っています。

分布

マヌルネコは、中央アジアの広範囲に分布しています。具体的には、アフガニスタン、イラン、インド（ヒマラヤ山脈）、カザフスタン、キルギス、中国、ネパール、パキスタン、ブータン、モンゴル、ロシア南部などが主な生息地です。かつてはウズベキスタンやタジキスタンにも生息していた可能性がありますが、アゼルバイジャンやアルメニアでは絶滅したと考えられています。

形態

マヌルネコは、体長50-65cm、尾長21-31cm、体重はオスで3.3-5.3kg、メスで2.5-5kg程度です。体毛が長く密集しているため、丸みを帯びた体型に見えます。この厚い毛のおかげで、雪の上や凍った地面でも体を冷やさずに過ごすことができます。体色は橙色を帯びた灰色で、腹部は白っぽい灰色、四肢は黄土色をしています。腰には茶色の横縞がありますが、毛の密度によっては判別しにくいこともあります。尾には5-6本の黒い縞模様があり、先端は黒色です。頬は白色で長い毛があり、目の端から頬にかけて黒色の縞が走っています。冬毛は夏毛よりも灰色みが強く、模様が不鮮明になります。

耳は左右に離れて低い位置にあり、顔つきも特徴的です。目の位置が高いため、額が広く見え、丸い耳が低い位置についているように見えます。目の位置が高いのは、岩陰から獲物を狙うのに適しているためと考えられています。虹彩は黄色で、瞳孔は丸く収縮します。

分類

かつてはペルシャ猫の原種と考えられていましたが、現在ではイエネコよりも初期に分岐した種とされています。分子系統解析では、ベンガルヤマネコ属と近い系統であることが示唆されています。英名のPallas's catは、発見者のPeter Simon Pallasに由来します。

生態

マヌルネコは、標高450-5,073mの岩場の多い草原やステップ、半砂漠などに生息しています。昼夜を問わず活動しますが、主に薄明薄暮時に狩りを行います。危険を感じると、動かずに身をかがめて地面に腹ばいになります。

食性は肉食で、主にナキウサギ類、アレチネズミ類、ハタネズミ類などの齧歯類や、イワシャコ類などの鳥類を捕食します。ノウサギ類やマーモット類の幼獣を食べることもあります。狩りの方法は、獲物に忍び寄る、草むらから飛び出す獲物を捕食する、巣穴の入り口で待ち伏せするなど様々です。

妊娠期間は66-75日程度で、主に4-5月に出産します。一度に2-4頭の幼獣を産みます。野生での平均寿命は5年、飼育下では15年以上生きることもあります。

人間との関係

マヌルネコの名前は、モンゴル語で「小さい野生ネコ」を意味する「manul」に由来します。毛皮が利用されることもあり、モンゴルやロシアでは脂肪や内臓が薬用になると信じられています。

しかし、生息地の破壊、違法な狩猟、獲物の減少などにより、生息数は減少しています。多くの生息地で狩猟は規制されていますが、密猟が行われていると考えられています。ワシントン条約附属書IIに掲載されており、国際的な取引は規制されています。

飼育下では、トキソプラズマ症に感染しやすいことが知られています。また、高地に生息するため免疫力が低く、感染症による死亡率が高い傾向にあります。そのため、動物園では繁殖に力を入れており、近親交配を避けるために世界的な連携が行われています。

日本では、東山動植物園で初めて繁殖に成功しました。その他、旭山動物園、那須どうぶつ王国、埼玉県こども動物自然公園、上野動物園、王子動物園、神戸どうぶつ王国などで飼育されています。

マヌルネコに会える日本の施設

旭山動物園
那須どうぶつ王国
埼玉県こども動物自然公園
上野動物園
東山動植物園
王子動物園
* 神戸どうぶつ王国

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