メスカル

メスカル（Mezcal）

メスカルは、リュウゼツランを主な原料としているメキシコ特有の蒸留酒です。テキーラが特定のリュウゼツラン品種から作られ、世界的に認知されているのに対し、メスカルはその名を一般的に指すもので、多種多様な品種から製造されています。名称の由来は、ナワトル語の「メトル」（リュウゼツラン）と「イスカリ」（料理する）から派生しており、直訳すると「料理されたリュウゼツラン」という意味になります。このため、酒だけでなくリュウゼツランを使った料理もメスカルとして広く認識されています。

概要

メキシコ国内には150から200種のリュウゼツランが存在し、それぞれが異なる風味を持っています。しかし、公式にメスカルと名乗るためには、厳格に定められた品種のリュウゼツランを使用することが義務付けられています。主に以下の5つの品種が利用されており、副原料として砂糖の使用が一般的です。

• - Agave angustifolia
• - Agave esperrima
• - Agave weberi
• - Agave potatorum
• - Agave salmiana

地域によっては他の品種を使った自家製のメスカルや密造酒も存在し、レチュギーヤ（Lechuguilla）やライシーヤ（Raicilla）と呼ばれる特産品もあります。

自家酒造の製法

自家製のメスカルは、成熟したリュウゼツランの基部を取り、地中で石を使って蒸し焼きにします。これにより香りが引き立てられます。2日後、焼き上がったものを掘り出し、木製の容器に入れて叩き潰し、その後発酵槽に層を作り水を加えます。ここで砂糖や発酵剤を加えて発酵を促し、約4日から7日後に完成します。この液体を蒸留器で処理し、必要に応じて水でアルコール度数を調整します。4～5年寝かせることで高品質なメスカルが出来上がりますが、すぐに飲まれることも多いです。

歴史

メスカルの歴史は16世紀に遡ります。スペイン人のコンキスタドールが現地で飲む酒を確保するため、地元の材料を使った蒸留酒の製造を始めました。当時、主要穀物であるトウモロコシは発酵に必要な糖化が行われておらず、メスカルが重要な選択肢となったのです。また、メスカルの製造にはヨーロッパから持ち込まれた蒸留技術だけでなく、フィリピンから伝わった技術もあり、ヤシ酒との共通点を持っています。17世紀にはメスカルは重要な税収源となり、広く飲まれるようになりました。しかし近年、多くの蒸留酒が生産される中、メスカルはその生産の約16パーセントにとどまっています。

誤解

一部誤解されている点があります。メスカルがサボテンを原料と思われることが多いですが、実際にはリュウゼツランが使用されており、サボテンとは異なる植物です。また、メスカルには幻覚成分が含まれるとされますが、これは「メスカレロ」がサボテンから得る幻覚剤に由来するものであり、メスカルそのものの成分ではありません。さらに、プルケという別の飲料がメスカルとは異なり、蒸留法も異なります。

備考

メスカルの一部製品には、チリやイモムシ（グサーノ）、サソリの抜け殻が瓶に入れられていることがあります。特にグサーノ入りのメスカルは日本でも知られており、メキシコではその原料として昆虫食が人気です。グサーノは粉末として、塩と混ぜてライムと一緒に食べるなどの文化も存在します。

メスカルは伝統的には安価な酒として親しまれていましたが、近年では生産者が工夫を凝らし、品質を高めて高級酒としての地位を獲得しています。また、現代の技術を用いた製造プロセスにより、テキーラとは異なる新しい風味を楽しめる製品も増加しています。

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