メランジュ

メランジュとは

メランジュ（Mélange）とは、地質学における特殊な地質構造の一つで、様々な種類の岩石が、あたかも混ざり合わされたかのように存在する地質体のことを指します。具体的には、泥岩のような比較的柔らかい基質の中に、数センチメートルから数キロメートルにも及ぶ多様な大きさの異質な岩塊が散在している状態を指します。これらの岩塊は、堆積岩、変成岩、火成岩など、その起源も多岐にわたります。

代表的な例としては、アメリカ合衆国カリフォルニア州のフランシスカン層群が挙げられます。

メランジュの成因と分類

メランジュの成因は一つに特定されるものではなく、様々な地質学的プロセスが関与しています。そのため、成因に基づいていくつかの種類に分類されることがあります。

テクトニックメランジュ: プレートの運動など、構造的な力によって形成されたメランジュ。
堆積性メランジュ: 堆積作用によって、異なる種類の岩石が混ざり合って形成されたメランジュ。
ダイアピルメランジュ: ダイアピル構造（周囲の地層を貫いて上昇してきた地質構造）によって形成されたとされるメランジュ。

ただし、ダイアピルメランジュについては、その成因がダイアピル現象とは異なるという意見もあり、その呼称の妥当性が議論されています。

また、堆積物中に閉じ込められたガスが、断層運動などによって急激に気化し、その体積膨張によって周囲の岩石を破壊することでメランジュが形成されることもあります。これは「爆発性メランジュ」と呼ばれることもあります。

日本国内では、西南日本外帯の秩父帯や四万十帯が、多重の構造を持ち、複合的な成因を持つメランジュの例として挙げられます。日本列島の基盤は付加体を母体としており、その後の火山活動や変成作用によって改変されたため、各地にメランジュが見られます。特に四万十帯は、メランジュの成因が特定しづらい例として知られています。当初は堆積性メランジュと考えられていましたが、その後の調査・議論の結果、現在では複合起源のメランジュであると考えられています。

メランジュとオリストストローム

オリストストロームとは、硬い岩塊が柔らかい基質に取り囲まれ、巨大な地滑りによって形成されたと考えられる地質体です。従来の地質図ではスランプ礫岩や海底地すべり礫岩などとして扱われていたものも、オリストストロームに含まれることがあります。オリストストローム内の岩塊はオリストリスと呼ばれ、泥質の基質中に不規則に分布しているのが特徴です。

メランジュとオリストストロームは、産状や起源が類似しているため、同じ地質体であっても、研究者や地域によって呼び方が異なる場合があります。しかし、プレート沈み込みによる断層運動が関与しているかどうかなど、両者の関係性については意見が分かれています。

メランジュという言葉は、構造的な成因に限定されずに使用される傾向にありますが、オリストストロームは堆積性の成因を含む言葉として認識されています。このことが、メランジュとオリストストロームに関する議論の一因となっています。

プレートテクトニクスとの関係

プレートテクトニクスは、地球表面を覆うリソスフェアが複数のプレートに分かれており、それらが相互に運動しているという理論です。プレートの運動に伴う沈み込み帯では、チャートや砂岩などの岩塊が泥岩基質に取り込まれてメランジュが形成されることが多く、メランジュは付加体を特徴づける構造物の一つとされています。

付加体には、海洋プレート上での堆積の順序を反映して、チャート、珪質泥岩、泥岩、砂岩泥岩互層といった層序が見られることが多く、プレートテクトニクスを説明する上で重要な要素となっています。

参考文献

脇田浩二 著「メランジ」、地学団体研究会新版地学事典編集委員会 編 編『地学事典』（新版）平凡社、1996年、1306頁。ISBN 4-582-11506-3。
木村学「プレート収束帯のテクトニクス学」 東京大学出版会 2002年

関連項目

付加体

外部リンク

* [メランジュ - 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター](https://www.gsj.jp/。

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