ヨアキム

ヨアキムについての伝承

ヨアキム（Joachim）は、キリスト教の重要な人物であり、聖母マリアの父親とされています。彼は、古い伝承に基づき、妻はアンナで、ユダ族の出身であり、ダビデ王の家系に属しています。ヨアキムという名は、ヘブライ語のエホヤキムから派生したもので、「ヤハウェは起き上がらせてくださる」という意味を持っています。彼は正教会、カトリック教会、聖公会など広く信仰されるすべての教派で聖人として崇敬されています。

ヨアキムに関する説明は、新約聖書外典である『原ヤコブ福音書』を基にして多くの人々に知られています。この福音書によれば、ヨアキムとアンナは非常に信心深いカップルでしたが、長年子供に恵まれず苦悩していました。彼らは毎年エルサレムの神殿を訪れて感謝の祈りを捧げていましたが、ある年、神殿の祭司から町の人々に悪口を言われることとなります。それは、子供がないことは神の怒りを表しているのだというものでした。この祭司は、ヨアキムの捧げ物を拒否し、彼らが神への義務を怠っていると非難しました。

このことで深い悲しみに暮れたヨアキムは、荒野で四十日の間断食を行い、神への悔い改めを誓いました。彼は、もしも授かるならその子供を必ず神に捧げると祈りました。すると天使が彼の元に現れ、彼の祈りが聞かれたことを伝えました。すると、アンナは老齢にもかかわらず懐妊し、女性の子供が誕生しました。この子が聖母マリアであり、三歳になった際には、夫婦は神殿において彼女を神に捧げることを決意しました。

この伝承は、東方教会において初期から受け入れられ、マリアの誕生と神殿への奉献はそれぞれ祭りとして祝われるようになりました。正教会ではこれらは生神女誕生祭と生神女進堂祭という名称で、キリスト教の重要な祭りの一つとされています。一方、西方ではこの伝承はなかなか広まりませんでしたが、後に祭りが行われるようになりました。また、『黄金伝説』にもヨアキムに関する伝承が記載されており、特に中世ヨーロッパでは彼の物語が好まれて描かれていました。

正教会における称号は「神の祖父」であり、彼の記憶は公祈祷の中でも大切にされており、聖体礼儀の終結において必ず言及されます。夫妻は「神の祖父母ヨアキムとアンナ」としても知られ、カトリック教会でも聖人の連祷の中に必ずその名が登場します。

名の変化形としては、ドイツ語のヨアヒム、スペイン語のホアキン、フランス語のジョアシャン、イタリア語のジョアッキーノなどがあり、地域によりさまざまな形で親しまれています。インターネット上では「キム」という略称も広く使用されています。

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